今週は年明けと言う事もあり、週間チャートの発表はありません。Billboard JAPANのチャートは今週分と来週分のチャートを8日にまとめて発表するとアナウンスされています。
【年末年始のチャート発表につきまして】
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) 2019年12月23日
2019年12月30日(月)〜2020年1月3日(金)の間、週間チャート及び速報ニュース(先ヨミ)の更新はお休みです。
週間チャートは、2020年1月8日(水)に2週分(2019年12月23日~29日集計+2019年12月30日~2020年1月5日集計)発表いたします。https://t.co/T7qtJyOlRH
そこで今週は、Billboard JAPANの集計要素から今年2020年の動向について見解をしていきたいと思います。
・売上要素(CD売上、ダウンロード売上、ストリーミング回数)
Billboard JAPANのチャートチャート分析サービスCHART insightにおける、ハイブリッド指数「SALES」に当たる部分であり、オリコンが2019年度よりスタートさせた「合算ランキング」に当たる部分となる(ただしオリコンの場合はCD売上の比重が大半を占め、更にオリコン自身が速報・解説すら行わなくなった雑ランキングに成り下がっている。この事からオリコンのメインランキングはあくまでCD売上のランキングであり、一見すると重要そうな合算ランキングは、ダウンロードやストリーミングのランキング以下の扱いとなっている)。
やはりこの中ではストリーミングのシェアが顕著に伸びてきている、週間10位の数字を参考にすると、昨年度当初は100万再生に満たない週もあったが、年度末には200万再生を上回る週も出てきている。世界的にも2010年代後半からストリーミングのシェアが増しており、アメリカでは音楽市場の売上の8割がストリーミングになったとの最新の報告がされている。
日本でもこれが主流になるのは時間の問題であり、CD売上、ダウンロード売上は後退していくものと見られる。おそらくダウンロード売上に関しては、週間10位の水準が1万DLを割る週が増えるのではないかと思われる。CD売上に関しては、昨年度の週間10位の平均が10,788枚。週間10位が1万枚以下の週が23週あったが、これについても水準は落ちるものと見られる。
ただ現状ではストリーミング再生数が高くても、一時的なCD売上には及ばず、週間チャート1位はCD売上勢に取られるケースが多い。これについては最近、アメリカのアルバムチャートでも時折見かける現象となっているが、結局のところ1週間しか高い数字を取れないため、2週目以降の順位が振るわず、上半期チャートや年間チャートでは思った程の順位になっていない印象を受けているかもしれません。
そこで自身の同人誌「J-POP Analyze 2019 夏コミ号」内に掲載した表を、今回は昨年度下半期分と共に掲載いたします。表の対象になっているのは「週間CD売上1位、もしくは10万枚以上」のCD売上、Hot 100でのその週、および翌週の順位です。
※ 翌週の黒塗り順位表記無しは、100位圏外かつ有料アカウントでのみ検索可能なため規制
これを見ると分かるのが、CD売上1位を記録した曲の大半が、翌週にはトップ10すら残れていない現状である。CD売上(オリコン)で1位になればテレビでも取り上げられるだろうし、それで楽曲に興味を持つ人がいればCDやダウンロード、ストリーミングでも聞かれる。MVも見られるだろう。それが伴っていればHot 100で順位の下落は抑えられるはずだが結果はこれである。特に1週で100位圏外に消えている曲は論外と言えるだろう。
それだけBillboard JAPANにしろ、オリコンにしろ、「週間チャート1位」が説得力を持たない宣伝文句であり、ファンによるただの自己満足になってしまっている。これでは「週間チャート1位はヒット曲ではない」とまで言われかねないだろう。だがなぜ1位に執着するのか。これについてはオリコンの速報記事が1位しか取り上げない部分も影響しているだろう(1位以外が取り上げられる時もあるがごく稀)。
一方Billboard JAPANの速報記事は1位以外も取り上げ、場合によっては掲載されている順位以下の部分についても扱う。ここら辺は意識の違いと見ていいだろう。
また一方で、説得力を持ち始めているストリーミングの週間チャートがほとんど取り上げられていない点は気になる点である(フジテレビの「Love music」ぐらいかな?)。これについてはダウンロードチャートがあまり取り上げられずに(TBSの「CDTV」も昨年9月でレコチョクがスポンサーから降りて取り上げられなくなった)、ヒットチャートとして取り入れられなかった過去があるだけに(これによりCDの特典商法が横行するきっかけになった?)、その点が曖昧になり、一方で人気と一致しないCD売上(オリコン)のランキングが毎週取り上げられ(CDは発売予定が分かっており、予定調和が取りやすいのもありそうだ)、その影響でBillboard JAPANでもCD売上1位が週間1位となり、そこだけが目立つとヒット曲の概念が分かりづらくなってしまっている現状もある。確かにストリーミングのチャートは変動が少なく取り上げづらい点もあるが、その点をテレビでも取り上げるとヒット曲が分かりやすくなるのではないだろうか。
週間チャート1位はCD売上1位が取る現状はしばらく変わらないだろう。特にジャニーズが「オリコンの連続1位」に拘りを見せ、音楽配信への参入に消極的な立場を取り続けて、更にはオリコンとの癒着関係(上記、音楽配信のチャートを取り扱わせないように仕向けている可能性もあり得るだろう)を維持するのであれば尚更である。となると変わらないといけないのは「1位だけがヒット曲では無い」と言う、チャートを見ている側ではないだろうか。現実、昨年のHot 100年間チャートでは週間1位を獲得していない曲がベスト10で半数以上を占めており、週間チャート1位の重要性が薄れてきている事は明白である。それでもなお、1位だけを取り上げる、1位だけに拘るのはナンセンスではないだろうか。「木を見て森を見ず」と同じである。
昨年度の年間チャートは、それを暗に伝えようとしているようにも見える。
・ラジオ
ラジオチャートについてはかなり独特な動きをするため、特にラジオを良く聞いている人にとっては、この週間チャート単体だけで見ても面白いだろう。確かにHot 100全体に対しての影響力はそれ程大きくは無い(1割程度と言われている)。またリクエストが必ず反映される訳でも無いため、ファンが直接介入出来ない要素でもある。更に以前あったようなラジオからの口コミがストリーミングになるようだと、ラジオをきっかけとしたヒット曲は以前のようには現れなくなりそうだ。
しかしながらBillboardの根幹となる要素である。例え影響力が小さくなったとしても、ここだけは外せないだろう。ヒット曲でもパワープレイでも無いところから思わぬヒット曲の玉子を引き出せるかどうか。全国のMCに期待したい。
・ルックアップ
CD売上では無く、CDDBへのアクセス数(CD稼働数)となるルックアップはCD売上に比べると説得力があり、特典だけで売ったCDがルックアップではとんでもなく低い順位になっているケースが珍しくない。とは言え媒体がCDである以上、総売上が下がっており、更にレンタルショップが音楽配信普及の影響により縮小しているため、ルックアップもチャートへの影響力が相対的に下がっているのが現状である(CHART insightにおけるハイブリッド指数「CONTACT」においても、ダウンロードやストリーミングに比べルックアップの影響力は小さい)。ただ、音楽配信の無いジャニーズと坂道以外は他の要素により引っ張り上げられている傾向があるため、結果的にはレンタルにも影響が出ているようだ。
あまり取り上げられる要素ではないものの、これが可視化される事で、売上は低いがしっかり聞かれているCDの存在も明らかに出来る。ただレンタルの影響力は少なからずあり、それがこれだけ音楽配信が普及した現在でも全ての作品がCD発売と同日にレンタルが出来ない現状はどうにか改善出来なかったものか(最早今更なんだよなぁ…)。結局これもまた、CD売上を第一にしたい勢力によるものなのだろうか?
・ツイート
ラジオとは逆にファンによる直接介入が容易に効く要素ではあるが、おそらく毎年のようにポイント比率に関しては下方修正されていそうではある。週間でもこれだけで上位に食い込むには相当数が必要で、CDTVの週間40位以内であればハードルはやや低くなるぐらいか。ツイート要素不要論もあるが、そこまでチャートを邪魔している訳では無く、CD売上同様、一時的なものと見ていいように思える。
・MV再生数
ストリーミングの一部として用いられている場合もあるが、Billboard JAPANでは独立した要素として取り入れられている。昨年はFoorin「パプリカ」のMVがISRC付番されておらず、累計1億回以上の再生数が反映されなかった例があるものの、だいたいのMVに関しては集計対象となる環境が整ってきたと言えるだろう(ただ坂道系の公開の仕方は…)。そうなると次の段階として集計対象を「ティザー映像の無いフルMV」に限定するかどうかと言う点が挙げられるだろう。もっとも「ショートVer.」と言う形のMVは日本にしか無く、「ティザー映像付きMV」はアメリカのBillboardでは集計対象から外されている(ストリーミングで聞いていて、途中でその楽曲やアルバムのCMが入る曲なんて無いだろう)。ここもまた、売るための施策を取っている勢力との争いになりそうだ。
・カラオケ
2019年度から取り入れられた新要素。ただこの週間チャートはストリーミング以上に変動が少なく、上位に定着すると少ないながら安定したポイントが得られる要素になっている。他と違い楽曲がリリースされた直後から効果が発揮される要素ではないが、カラオケでも定番になるような楽曲に対するそれ相応のポイントは得られていると思われる。あとは、カラオケを利用する人の推移次第とも言えそうだ。
今年度の見解
昨年の年間チャートが1位「Lemon」、2位「マリーゴールド」と前年リリースの曲が並んだが、定番曲に対するポイント要素が増した事に対しての結果なだけに、これだけで「2019年はヒット曲が無かった」と結論付けるのは早合点と言えるだろう。ただこの傾向であれば、今年度の年間チャート1位最有力候補は現在週間チャートで上位に留まり続けているOfficial髭男dism「Pretender」と言える。ただそうなってしまった時に、チャートとしての機能を果たしているのかとの疑問にも向き合わなくてはならなくなるだろう。とは言え「Lemon」、「マリーゴールド」「Pretenfer」とKing Gnu「白日」にも言えるが、大ブレイクした曲を新曲が追い抜けない現象が続いている点は気がかりである。それが印象を悪くしないか、本人にプレッシャーを与えないか。特にあいみょんは昨季の落ち込み方から見ると、次の新曲で正念場を迎えそうな気がするだけに、昨年ブレイクし紅白出場まで至ったヒゲダンとKing Gnuが状態を維持出来るか。そして、新たな存在が現れるのか。行方を見守りたいところだ。