Billboard JAPAN Hot 100にリカレント・ルールは必要か?

 年明けに投稿した記事に「今年度の年間チャート1位最有力候補は現在週間チャートで上位に留まり続けているOfficial髭男dism「Pretender」と言える」と書いたところ、その後今年発表されたBillboard JAPAN Hot 100において「Pretender」は、今週まで首位を(5週連続で)獲得し続けている。昨年米津玄師「Lemon」が年末年始のチャートを席巻し、そのまま年間でも2年連続で首位を獲得している事から、今年は「Pretender」がその傾向にぴったり当てはまっている。

 

amano-yuuki.hatenablog.jp

 

 しかしながら2年連続で前年リリースの曲が年間1位を獲得してしまっては「チャートとしての機能を果たしているのかとの疑問にも向き合わなくてはならなくなるだろう」とも書きました。そこで本家、アメリカのBillboard Hot 100で取り入れられているリカレント・ルールの導入が検討されるべきではないかとも思います。

 

 日本では馴染みの無いルールですが、現在Billboard Hot 100におけるリカレント・ルールについて触れると、以下の2点が条件に加わる形になります。

  • チャートイン21週目以降の楽曲は50位以内が条件
  • 同53週目以降の楽曲は25位以内が条件
  • ただし、急上昇が認められた場合はこの限りでは無い

 この条件を満たさない場合はチャートから除外されるルールとなります(総合チャートでの獲得ポイントもゼロになるが、売上や再生数等の個々の記録は残る)。これについては発売からではなく、あくまでチャートインした週数が条件になるため、過去の曲がリバイバルヒットしても、条件を満たしていなければ51位以下でもチャートインが可能となります。

 現在Billboard JAPAN Hot 100ではストリーミングのチャートがユーザー数の増大により影響力を増している一方で、一向にチャートが活性化せず、上位の固定化が目立ち、それによりチャートの目新しさに欠ける印象を持たれているところがあります(CDTVを見ている方も同じ印象を受けている方が多いかと思います)。昨年1位の「Lemon」はストリーミング配信を行っていませんでしたが、同じく前年リリースの曲ながら年間2位になったあいみょんマリーゴールド」は、ストリーミングでも年間1位になっており、その傾向が強く見受けられます。今年は更にその傾向が強くなる中、現在ストリーミングチャートで上位の「Pretender」はもちろん、King Gnu「白日」、LiSA「紅蓮華」も、このままでは今年の年間チャートでも上位に残りそうな気配がします。

 果たしてこれが健全なチャートなのかと言う点では、疑問を感じる人も多いかと思います。そこでチャートの活性化と上位に留まり続けている楽曲に対する獲得ポイントのインフレを抑制する意味でもリカレント・ルールの必要性を検討する時期に達しているのではないかと思います(ちなみにYouTubeが発表しているランキングは公開後1年経過で自動的に除外される)。

 しかしながら…

www.billboard-japan.com

www.billboard-japan.com

 「Lemon」も「マリーゴールド」も、(投稿時点では)上記のリカレント・ルールに抵触する順位まで下落していません。これではまったくもって無意味です。

 そこで考えられる対策としては、獲得ポイントに係数処理をかけてしまうルールにしてしまえばいいのではとも思いました。

  • チャートイン21週目以降の楽曲は獲得ポイントを50%減

 とすれば、ある程度のチャート活性化とインフレ防止にはなると思います。ただこれでは、例えば紅白に出場した歌手・楽曲の上昇効果が、このルールに抵触する・しないで大きく伸びが変わってきてしまい、不公平な感は拭えません。期間を21週目にするか、半年経過の27週目にするか、1年経過の53週目にするか(53週目から更に係数処理の度合いを増すか)は議論の余地がありますが、いずれにせよ何らかの抑制対策をしなければ、また今年の年末、仮に「Pretender」が年間1位になった時に「今年のヒット曲は無かった」と思われかねないだけに検討が必要ではないかと思います。

 

 ストリーミングチャートの活性化が待たれるところですが、持続性の高い要素を取り入れる事による弊害をどう防いでいくか。チャートディレクターの苦労は絶えないところですが、ぜひより良いものを作っていただきたいものです。