KAT-TUNをデジタルに放った結果…

 「ジャニーズをデジタルに放つ新世代」とはSixTONESのキャッチコピーであるが、メディアへの所属タレントの顔写真掲載すら規制していたジャニーズ事務所も、遅ればせながらYouTubeSNS等によるプロモーションを強化。先日6月2日には海外向けとも思える英語版のジャニーズ事務所公式Twitterアカウントが開設され、今後の展開が注目されそうである。

twitter.com

 

 とは言え楽曲面での展開はと言えば、相変わらずCDのみでの発売が通例で、先日堂本光一のソロ楽曲が配信を始めたものの、SixTONESをはじめとする主要グループの楽曲は未だに大多数がダウンロード販売はおろか、ストリーミングでの配信が行われていないのが現状である。これについては以前も「利益率の高いCD売上のランキングを全面に押し出したいオリコンとの利害関係が一致している」との見立てをしており、「オリコンはジャニーズが不利にならないようにCD売上の集計方法を変更している」とも指摘しました。Music Card、ライブチケット同梱シングルの集計中止はKAT-TUNが負けそうになった時に発表され(施行は後日)、売上の精査(特典やイベントによる大量購入を要因とする売上に対する減算処置)に関してはKis-My-Ft2が負けそうになった翌週から突如適用されました(いずれも2016年の出来事だが、売上の精査に関しては、200万枚達成阻止のためにAKB系のみ2014年から秘密裏に適用されていた疑いが強い)。

 

 しかしながら今年3月、デビュー15周年を迎えたKAT-TUNの新曲「Roar」が、ジャニーズ事務所としては初となるCDとデジタルの同日リリースを慣行。CDリリースの数週間後にデジタルリリースをする例はありましたが、同日リリースは初めてとあってその結果がどうなるのか、この結果次第ではジャニーズ事務所の今後の展開も左右しかねないところでしたが…

 

 結果を見てみましょう。

www.billboard-japan.com

  分かりやすくするため、ダウンロード(紫)ストリーミング(青)ルックアップ(橙)のみのグラフとしました。

 

 ダウンロードでは初動3位。ただこの時の1.3万DLは決して高い数字ではなく、19.6万枚を記録したCD売上と比べてると明らかに低い。そして持続面においても4週間で100位圏外に飛び、6週目には300位圏内からも姿を消した(上リンクで折れ線グラフが無くなっているのは300位圏外)。

 ストリーミングでは更に厳しい結果となっており、100位圏内に一度も顔を見せる事なく、4週目には300位圏外へと消えてしまった。CD売上ではデビュー以来週間1位を取り続けているKAT-TUNですら、この有様である。

 参考までにCD稼働数を示すルックアップの結果を見ると、ここでは2週連続1位となったが4週間でトップ10から後退。今回はファンクラブ限定盤を含め8種リリースで、通常版と期間限定盤3種ではカップリング曲が違う仕様であったため、(盤種別にカップリング曲が違う)同様の手法を取っているジャニーズのグループと比べても、この結果は物足りなさが残る。

 

 これを見ると、CDは一定量聴かれているものの、ストリーミングではまったく歯が立たない結果となってしまっている。ルックアップはCD全体の売上やレンタルショップの減少で水準そのものが低下しており、またストリーミングは利用者の増大に伴い水準が上がっている傾向が見られているため、このような相反する結果が出ている可能性もあるが、やはりこれはファン以外への広がりが薄いために起こっている結果とも言えるだろう。ダウンロードでもCD売上程の力を発揮出来ていないのもその点があてはまる。要は「ファンだけが頑張っている結果」である。それが露呈してしまったのであれば、他のジャニーズグループが同じ売り方をするだろうか。わざわざ恥をかくような真似はしないだろう。

 

 この結果を受けて、ジャニーズは主要グループの楽曲について、今後音楽配信に踏み出す可能性はますます低くなったと言えるだろう。そしてオリコンとの関係性を強化し、(自分達が手懐けている)CD売上ランキング(一般的に言われるオリコンランキング)の影響力を強めるように働きかける可能性もある。最悪の場合、Billboard Japanを(音事協電通と結託して)圧力で潰しにかかるところまで考えられるだろう。しかし海外に展開したいのであれば「ジャニーズをデジタルに放つ」のは必要不可欠となる。となると、日本以外でのストリーミング解禁と言う選択肢もありえそうだが、果たしてどうするのか。少なくとも、日本国内でのジャニーズ楽曲に関しては、今後もCDで聴くしか無さそうである。