2021年 上半期ランキングを改めて振り返る(2)

 

amano-yuuki.hatenablog.jp

  さて先ほどの続きです。ここでは上半期のアルバム、シングルランキングを見ていきます。

 

 まずはアルバムランキングです。

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 1位SixTONES「1ST」、2位YOASOBI「THE BOOK」となったが、なんとこの2つは同じ1月6日にリリースされている。同日にリリースされたアルバムが上半期で1位、2位は非常に珍しいが、この両者はまったく異なる売り方を見せている。

 まず「1ST」だが、こちらはジャニーズ事務所所属のグループとあってリリースはCDのみ。そのCD売上は57.2万枚を記録しアルバムCD売上でも上半期1位となっている。

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 Billboard JAPAN Hot AlbumsはシングルチャートのHot 100と異なり、CD売上ダウンロード売上(バンドル売上のみ)ルックアップ(CD稼働数)の3要素のみとなっている。さらにHot 100で適用されている一定数量以上のCD売上に対するポイントの割引措置(係数処理)も行われていないため、CD売上でのゴリ押しが有効となっており、上半期ランキングではCD売上上位7作がトップ10に入り込んでいる。

 しかし2位に入った「THE BOOK」はCD売上では13位。これは限定的なCD販売を行っていたためであり、実際グラフで見てみるとCDが売れている時期と売れていない時期がはっきりと分かれている(黄色がCD売上の順位を表している。途切れている部分は300位圏外)。

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 しかしそれでも上半期2位になれたのは、アルバムダウンロードが6.5万DLと非常に高い数字を出していたからである。CDの販売方法によるところもあるが、物質(CD)を伴わない形であってもこれだけの売上を記録したのは特筆すべきだろう。なおアルバムダウンロードの売上上位からは上位4作がトップ10に入っている。

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 ちなみにCD稼働数を示すルックアップだが、YOASOBIがSixTONESを上回り上半期1位となっている音楽配信が無いCD売上1位のCDで聴くしかないCDより、DL売上1位でありCD売上13位の音楽配信でも楽曲を聴けるCDの方が多く聴かれているのは、SixTONESは売上ほど聴かれていない、もしくは長期に渡り聴かれていない結果とも言えそうだ。そしてアルバムCD売上が重要なこのランキングにおいて、先日リリースされたBTSのベスト盤「BTS, THE BEST」が現時点で88.7万枚を売り上げているため、すでにSixTONESを逆転しているものと見られる。BTSは上半期ランキングでもCD売上、ダウンロード売上共にトップ10入りしている「BE」が4位に入っており、2作品が年間ベスト10入りする可能性が高くなっている。いずれにせよアルバムチャートはCD売上の影響力が強いと言う点は頭の中に入れておくべきだろう。

 

 

 つづいてシングルチャートの方も見てみたい。

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 上半期1位はストリーミングでも1位になっていた優里「ドライフラワー。2位はダウンロードで1位となっていたLiSA「炎」、3位にはBTS「Dynamite」が入った。

 各売上要素別のトップ10と見比べると、ストリーミングでは10位の平井大以外全曲が上半期ベスト10入りダウンロードでもトップ10のうち8曲が上半期ベスト10に入っているものの、CD売上のトップ10で上半期ベスト10に入ったのは7位のNiziU「Step and a step」(CD売上9位)のみとなっている。シングルチャートであるBillboard JAPAN Hot 100では一定数量以上のCD売上に対してポイントの割引措置(係数処理)が行われており、これが下半期から条件が更に厳しいものとなったため、年間ランキングでは下半期にCD売上のみが突出している楽曲については、上半期にリリースされた同様の曲と比べ順位が大きく劣るようになるだろう。またこれに先立ち、3月からはCD売上のポイント換算が引き下げられており、12月初旬(3日かな?)に発表される年間ランキングを見る際には留意しておきたい。

 そしてもう一つ注目したいのは、上半期ベスト10のうち、週間チャートで1位を取ったのは2位のLiSA「炎」、5位のAdo「うっせぇわ」、7位のNiziU「Step and a step」の3曲だけ。1位の優里「ドライフラワー」、3位のBTS「Dynamite」も週間チャート1位は無く(4位YOASOBI「夜に駆ける」は昨年週間1位はあるが、今年上半期は週間1位が無い)、9位のEve「廻廻奇譚」は最高位7位、10位のYOASOBI「群青」は最高位6位となっている。

 日本では長らくオリコンが音楽ランキングとして定着しており、そこで週間ランキング1位になる事が名を挙げる手段として定着していた。しかしこれを見てどう思うだろうか。「週間1位にならなくても、ヒット曲になれる」事を証明していないだろうか。逆に言えば、週間1位になる事に固執し、翌週以降燃え尽きたように下位へと消えていくだけの曲をヒット曲と呼べるだろうか。いい加減1週間だけの結果でヒット曲を決め付けるのを止めるべきではないだろうか。1週間の結果だけでは何も分からない。そこだけの結果を切り取って人気を偽装するのを愚かだと思わなければいけない。それは人気があるのでは無く、ただ売れただけである。売れるだけなら人気が無くても出来る。それを人気があると勘違いするのは痛々しい。これは何も日本だけではない。日本以外でもそうだ。週間チャートとは、そのように見るべきではないだろうか

 

 

 最後に参考まで、当ブログで毎週発表しているGreen Hill Music Chartの上半期ランキングを紹介しておきます(宣伝) 

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 下半期にはいったいどのようなヒット曲が現れるのは。そして音楽業界の動きはどうなるのか。また年間ランキングの際には触れてみたいと思います。