音楽チャートの見方(CD売上編)

 毎週のように伝えられている音楽チャートですが、集計対象となる業者の違いによりそれぞれ異なる数字が出されており、どれをどう見ていいのかが分からないと言った事もあるかと思います。そこで今回はストリーミングダウンロードCD売上と分けてBillboard Japan、オリコン日本レコード協会それぞれの違いを解説したいと思います。ここではCD売上についてです。

 

amano-yuuki.hatenablog.jp

 

 

amano-yuuki.hatenablog.jp

 

 

 

 レコード盤やカセットテープに代わる新たな音楽メディアとしてCDが登場したのは1980年代。以降、音楽産業の主流として流通してきたが、2000年代に入りパソコンの発達により違法なコピーCDが横行し売上が減少に転じると、その対策として楽曲のダウンロード販売が開始。2010年代に入るとストリーミング配信も本格化し、アメリカではレコード盤の売上がCD売上を再逆転する現象も見られる程、CDの売上は低下していきました。

 日本でも2000年をピークにCDの生産枚数が低下。その後、違法コピーによる売上の低下もあったものの、2000(ゼロ)年代後半に入りCDに特典を付けて販売する売り方が本格的すると、諸外国と比べCD売上の減少が鈍化。更にオリコンダウンロード売上を2018年度(アルバムは2016年11月)まで取り入れなかったためにCD売上がヒットチャートの中心に居座り続けた事も相まって特典商法がエスカレートする結果となり、結果CD売上と楽曲人気が釣り合わない事態に発展。オリコンが自滅し、Billboard Japanが台頭する要因となってしまった。

 日本ではCDプレーヤーの保有率が20%台前半まで落ち込んでいるとの調査結果もあり、また遅ればせながらストリーミング産業が本格化している事から、CD売上は今後も減少の一途を辿るものと見られている。すでに楽曲人気を示すデータとしての有用性が失われつつあるが、オリコンBillboard Japan、日本レコード協会とではそのCD売上の扱いがどうなっているのか。それぞれ見て行きましょう(ここだけはオリコンを筆頭とします)。

 

 ・オリコン

 オリコンがシングルランキングをスタートさせたのは1968年。以降日本における音楽ランキングの代名詞的存在として音楽業界に影響を与え続けてきた。基本的に「オリコンランキング」と呼ばれるのは現在でもCD売上だけのランキングとなる(オリコンチャート」は現在、正式な呼称としては用いられていない)。なおアルバムランキングは1987年10月からスタートしている。

 全国の調査協力店での売上をサンプルとして、全国の推定売上枚数を算出し発表しており(集計対象店舗での総売上ではない)、同一タイトルのカセットテープ、アナログレコードなども売上として合算している。また、手売りやイベント会場限定盤等のPOSを通さない売上データについても、オリコンによる審査次第では自己申告により集計の対象となる場合もある。なお輸入盤については週間ランキングで一括計上される(デイリーランキングには含まれない)。

 一部では週間ランキングの締め切りが日曜日17:00との噂もあるが、それは20年近く前の話(デイリーランキングが発表される前)との情報もあり、現在ではほとんどの店舗が閉店時間、または24:00まで集計対象とみられている(そもそもそれではデイリーランキングの締め切りが各日17:00じゃないとおかしい。ただオリコンもこの話を完全に否定している訳ではないので、不安なら店舗に問い合わせを)。

 2012年以降売上の対象となっていたミュージックカードについては2015年4月5日をもって集計対象から外されている。またライブチケット同梱シングルについても同年5月31日で集計対象から外されたが、2018年度から条件付きで再びこれが認められている。

 そして販促イベントにおける売上は発売前3ヶ月以内で、その時点で発売日、価格、商品内容が一般公開されているものについて有効となり、1イベントにつき「購入者数x3枚を上限」とするルール(従って必ずしもx3ではないため、3枚ずつ買えばいい訳では無い)を2016年9月から施行している(当初は「購入者数x2枚」だったが、2018年度から3枚に緩和された)。

www.oricon.co.jp

「販売施策イベントに基づく売上の集計ルールについて(訂正版)」2017年2月6日発表(pdf形式)

https://www.oricon.jp/files/2017/02/2017020604.pdf

 

 そのため、上記イベントでの売上は差し引かれて発表されるため、現在オリコンで発表されている一部作品の売上枚数は「純粋なCD売上枚数」とは到底言えないものとなっています。

 また(ミュージックカードやライブチケット同梱シングルを含む)これらの施策により、ジャニーズ事務所所属グループ(具体的に言えばKAT-TUNKis-My-Ft2が週間1位を取り逃しそうになったタイミングでその売り方に対する集計中止の発表、または翌週から突如、イベント売上に対する集計ルール変更の全体施行が行われており、ジャニーズ事務所のためのルール変更」とも疑われています。また上記イベント売上に対するpdfでは、『それまで一部の売上の影響が大きいアーティストに採用してきた厳格な基準を、全体にも適用する統一ルールといたしました』とあり、全体適用される2016年9月より前からこのルールを秘密裏に適用されていたアーティストが存在している事も明らかにされています(2014年ごろから48Gに適用されていた疑いが強い)。これもAKB48に200万枚を達成させないためにジャニーズ事務所オリコンに持ち掛けたルールとも噂されており(これにより、オリコンで最後に200万枚を達成したのがSMAP世界に一つだけの花」となっている)、48Gの人気低下を印象操作した疑いがもたれています。

 判断基準がCD売上のみだったがために、CD売上枚数に手を付ける形で歪みを正そうとしたものの、結果として一部の作品で意図的に減らされたCD売上枚数が公表され、それが一勢力の都合によるものである疑いまで持たれているのが今のオリコンの現状です。

 

 

Billboard Japan

 2008年のチャート開設時からCD売上はチャート要素として含まれており、Billboard JapanではSoundScan Japan調べのCD売上が使われている。オリコン同様、全国の調査協力店での売上をサンプルとして、全国の推定売上枚数を算出し発表しており(従って調査店舗数の大小が算出される売上枚数の大小とは関連せず、オリコンとの枚数差は集計ロジックの違いによりほぼ確実に出る)、またPOSを通すのが前提となっているため、一部会場限定盤やファンクラブ限定盤、輸入盤も集計の対象外となる(追記:これらについては以前と比べ、集計対象となっているケースが多くなっている)。

 以前は実店舗で販売されているパッケージのみが集計対象だったため、AKB48の劇場盤などが除外された売上が出されていたが、2016年2月からオンライン販売されているパッケージも集計対象となり傾向が一変。特にAKB48の総選挙シングルでは200万枚を超える数字が発表された際には戸惑いの声もあったものの、後述日本レコード協会のゴールドディスク認定との兼ね合いにより、オリコンが意図的に減算した売上枚数を発表している事が発覚する事態となった(出荷枚数に対し、オリコン発表の売上枚数ではあまりにも在庫数が多くなってしまうため)。なお以下のリンクには『複数枚購入を原因とする減算処理はしていません』とも記載されている。

www.billboard-japan.com

 これは調査対象を広げ、正確なCD売上の把握に努めたのと同時に、Billboard JapanがCD売上以外を含む複数要素を取り入れた音楽チャートであるため、特典効果を含む「調査範囲内での純粋なCD売上」を示しても他の要素でヒット曲を示す事が出来るためだと見られている。もちろん、単位が「枚」であるため、この数字にCD売上以外の要素が含まれている事はあり得ないBillboard Japanが原則、木曜日と月曜日に発表しているCD売上速報は、当たり前だがCD売上のみの数字である)。オリコンと比べ売上枚数が大幅に高く出ている場合は、オリコンが意図的に売上枚数を減らして発表している疑いが強く、逆に枚数が大幅に低く出されている場合は、SoundScan Japanの集計対象外である特殊な販路における売上が多いと見るのが正しい見方と言える(両方が相まって、結果的に同じぐらいの数字になる場合もある)。あと両社の差が5%程度であればただの集計誤差であり、集計店舗での売上云々を指摘するのは野暮だろう。

 

 

 オリコンとSoundScan Japanの差を簡単にまとめると…

そもそも集計業者が違うのだから、計上される枚数に違いが出るのは当たり前(各マスコミで内閣支持率が微妙に異なるのと同じであり、違ってはいけない理由は存在しない)

・両社とも集計対象となっている店舗での売上枚数をサンプリングし、全体の売上を推定算出している(従って、たとえ両社の集計対象店舗がまったく同じだとしても、推定売上枚数を算出する方法が異なるため枚数に差は出る集計対象店舗での総売上枚数では無く、集計対象店舗数の大小が影響している訳でも無い。ただしSoundScan Japanの方が若干高く出る傾向はある)。5%程度の差であれば集計誤差範囲であり、気にするだけ無駄。

オリコンではCDを多数買わせる施策を取っているCDについては1会計あたり上限3枚に扱われ、本来の売上から割り引かれる(上限3枚なので、1会計3枚ずつ買っても、それが3枚としてカウントされる保証は無く、中にはゼロになった例もある)。

・SoundScan Japanは一部店舗販売していないパッケージと輸入盤については集計対象外となっている(ただしこのケースは年々減りつつある)。

・当たり前だが、CD売上以外の要素が入っている訳が無い(単位が「枚」の時点で他の要素が含まれていると考える方がおかしい)

・「CD売上」と書いてあるのだから、「出荷枚数が発表されている」と考えるのもおかしい(出荷枚数は下記日本レコード協会の欄を参照)。

・「オリコンが正しい」との固定概念こそが間違え。むしろCD売上枚数の改変(減算)を公に認めているのはオリコン。減算処理を行わないと示しているのがSoundScan Japan(Billboard Japan)

・従って「オリコンが純粋なCD売上で、ビルボードはCD売上以外の要素が含まれている枚数」は完全な誤解となり、差し引かれているオリコンの数字こそ怪しまなければならない

 

 

日本レコード協会

 日本をはじめ、各国のレコード協会が一定数量の売上、もしくは出荷があった作品に贈られるのがゴールドディスク認定となる。

 日本では1989年1月21日以降にリリースされた作品を対象として、一定数量以上の出荷枚数(売上ではない)があった作品に対し同年4月以降、申請に基づきゴールドディスク認定を行っている。認定は月末〆の翌月10日発表(土・日・祝日の場合は前後する)。2003年6月までは洋楽と邦楽で基準が分かれていたが、現在は統一され以下の基準となっている。

f:id:amano_yuuki:20210710125705p:plain

ゴールドディスク認定基準

※ 以降100万単位でダブル・ミリオン、トリプル・ミリオン…となる。

 

 海外ではCD売上(出荷数)に加え、ダウンロード売上ストリーミング回数を含める形でゴールドディスク認定を行っている国もあるが、日本では現在、CDの出荷枚数のみで認定が行われている。また、日本レコード協会でのデータを基に行われるのが「日本ゴールドディスク大賞」となる。

 

 なお日本レコード協会に加盟している事が条件となるため、インディーズ等、加盟していないレコード会社については対象となっていない。

 

 

 ご覧いただいた方々の参考になれば幸いです。