さて今回は6月28日と7月5日に発表された「CDTVオリジナルランキング」の上半期ランキングを振り返ってみたいと思います。
まず「CDTVオリジナルランキング」についてですが、オリコン準拠のCDシングル1枚単位のランキングから、2017年4月以降Billboard Japan Hot 100準拠の1曲単位でのランキングに変更されており、今年3月までは土曜深夜に放送されていた「CDTVサタデー」でランキングが発表されていましたが、番組が終了(統廃合)し現在は月曜に放送されている「CDTVライブ!ライブ!」の中で発表されています(ランキングの日付は以前同様土曜日付となっている)。原則放送終了後にHP(↓リンク)で100位まで発表。放送が無い日に関しては通常の放送終了時間となる22:00前後に発表されています。
それでは、CDTVオリジナルランキングの上半期ベスト40を見てみましょう(集計期間は2021年1月2日付~6月26日付までの26週間と見られる)。
・ 週間最高位は2021年上半期内での最高位。複数回記録はカッコ表記。
・ 週数は週間100位以内のランクイン回数。白抜きは6月26日付時点で週間100位圏外
※ 9位のDISH//「猫」は原曲と「THE FIRST TAKE ver.」を合算集計している
このような結果となり、Billboard Japanとは4週間集計期間が異なるものの、優里「ドライフラワー」がBillboard Japan上半期ランキング同様に1位。2位には先日CD売上でミリオンを達成したSnow Man「Grandeur」が入り、3位にはBTS「Dynamite」が入った。一方でBillboard Japan上半期ランキングでは2位だったLiSA「炎」が、集計期間の影響から5位に後退している。
これだけを見ると集計期間と番組オリジナルの要素を加え「ああ、そうなのかな」との印象を受けるかもしれないが、なにぶん番組のランキングに対する説明が良くない。そのため、違和感を感じた視聴者も多かったのではないだろうか。
まず毎週発表している「CDTVオリジナルランキング」に対する説明である。この時番組内では、「カラオケ、Twitter、動画再生、CDセールス、ダウンロード、ラジオ再生回数等を集計しランキングを作成」と説明している。それに加え番組内で上半期ランキングについて「みんなが聞いて歌った神ランキング」と表記している。
実はこの時点でもはや矛盾してしまっている。「みんなが聞いて歌った」のであれば、曲を聞いたのか、歌ったのかの保証が無いTwitterの要素は必要無いだろう。そしてもう一つ問題があるのは、今や特典目当てで買う人が多い、聞いた保証が無いCD売上の要素は不要とまでは言わないが、そこまで重視される要素ではないだろう。しかし今のCDTVオリジナルランキングは、Billboard Japanが発表しているSoundScan Japan調べのCD売上と、オリコンのCD売上を1/2にして合算し、実質CD売上のポイント換算をBillboard Japanの1.5倍にして集計してしまっている(これによりバランス調整のためか、ダウンロードのポイント換算が、Billboard Japanの1/2に減算されている)。これは明らかに「みんなが聞いて歌った」と言う上半期ランキングのコンセプトとは異なる比重の掛け方と言えるだろう。
そして何より、「CDTVオリジナルランキング」に対する説明の中で、最も重要に見えるストリーミング(サブスク)再生回数に対する言及が無い(「等」に含まれてしまっている)のも不信感を強めている。もう一つ欠けているルックアップ(CD稼働回数)についてはCD売上と比べ比重が低い分、説明も省けるが、ランキングを見て分かる通りほぼ上位はストリーミング上位勢で占められており(おまけを言えばポイント換算はBillboard Japanと同等)、ストリーミングをあえて説明から外す必要があっただろうか。あえて説明から省いた2つの要素は「みんなが聞いて歌った」上半期ランキングのコンセプトと合致しており、番組内での説明を鵜呑みした視聴者からすると、誤認する可能性も否定できない。
従って「みんなが聞いて歌った神ランキング」の割に、「聞いた」「歌った」と言う根拠に欠けるTwitterが含まれ、CD売上が重視され、逆にダウンロードが軽視され、ストリーミングは説明すら省かれている、「看板に偽りのあるランキング」になってしまっているのである。「歌った」と言うカラオケの要素が週間ランキングより重視されていればいいのだが、コンセプトとは異なるランキングを作っている都合、おそらくそれはやっていないだろう。これでは違和感を感じるのは当然と言える。
もし本当に「みんなが聞いて歌った神ランキング」にしたかったのであれば、通常の週間ランキングとは異なる比重をかけるしかなかった。ここまで書いた事を例に取れば、Twitterの要素を省き、CD売上の比重を減らし、逆にダウンロード、ルックアップ、そしてカラオケの比重を上げるべきだっただろう。もしくはわざわざ「みんなが聞いて歌った神ランキング」と言う触れ込みをする必要が無かったと言える。下手をすれば印象操作になりかねないだけに、わざわざそのような触れ込みを立てる必要があっただろうか。これではランキングに対する信用性が失われるもの当然だろう。
ちなみに「日経エンタテインメント!」のこの記事ではBillboard Japanが発表していない部分についても掲載されており、ここも参考になる部分があるので、合わせて紹介しておきたい。
先ほどリンクで示したBillboard Japan上半期ランキングはベスト10までの紹介だったが、ここでは20位までの詳細な(各要素別を含めた)結果が掲載されている。CDTVオリジナルランキングでは上半期2位だったSnow Man「Grandeur」はBillboard Japan上半期ランキングでは18位。乃木坂46「僕は僕を好きになる」はBillboard Japan上半期ランキングでは20位以内に入っていない。この2曲は上半期のCD売上1位と2位であり、CDTVオリジナルランキングでは明らかにCD売上が作用して順位を伸ばしている。
更にSnow Man「Grandeur」のCD売上以外の記録を見てみると、Twitterも上半期1位となっており、先ほど触れた「聞いた」「歌った」と言う根拠に欠ける2要素両方で1位となってしまっている。CD稼働回数であるルックアップでは4位と高い順位を記録しているが、累計CD売上で大きく劣るLiSA「炎」が3位となっており、売上相応に、かつ長期的にCDが聞かれているかと言う点では疑問が残る。
このような点から、CDTVオリジナルランキングは「みんなが聞いて歌った神ランキング」とは到底呼べないものであるにも関わらず、このような触れ込みをしてCD売上を重視したランキングを発表しており、印象操作を起こしかねない状態となっている。これは2017年4月のランキングリニューアル以降からの問題であり、今に始まった事ではない。おそらくオリコンとの関係性を保つためだろうが、それがランキングの信用性を失う原因になってしまっているのであれば、当たり前だが改善が必要だろう。ただBillboard Japan Hot 100で6月からCD売上のポイントに対する係数処理(割合減算)の適用範囲が大幅に引き下げられ、CDTVオリジナルランキングでもこれが適用されている傾向が見られているため、この効果次第では今回浮き彫りになった問題が下半期以降改善される可能性もある。
追記:7月26日の番組内で放送された7月の月間ランキングを見ると、20万枚以上のCD売上がある関ジャニ∞「ひとりにしないよ」やENHYPEN「Given-Taken」がトップ10入りを逃していた。5月の月間ランキングで上2曲と同等の売上があったジャニーズWEST「サムシング・ニュー」が月間3位だったところからも、上記「CD売上のポイントに対する係数処理」の効果が見えており、週間ではそれほど結果が変わらないかもしれないが、月間や年間単位となると、CD売上一辺倒では5月以前の曲より不利を伴うだろう。
いずれにせよ、日本の音楽番組では珍しいフルコーラスでの歌唱披露など、視聴率は高くないながら他局の音楽番組にも影響を与えている「CDTVライブ!ライブ!」の根幹とも言えるランキングが、ヒットチャートと呼ぶには中途半端な構造になっているのは番組のためにも良くないだろう。そして今回、不必要な触れ込みにより印象操作をされかねないランキングを発表してしまった事については猛省を促したい。25年以上に渡り音楽ランキングを中心に発表していた番組であれば、誠意ある番組とランキングづくりをしてもらいたいものだ。