Billboard Japanは今月5日に2025年の年間ランキング(24年11月25日~25年11月23日)を発表し、曲別総合チャートであるHot 100はMrs.GREEN APPLEの「ライラック」が年間1位を獲得した(年末業務が立て込んでいたため、記事の執筆が遅れました)。
「ライラック」は前年4月リリースにもかかわらずストリーミングチャートでは現在でも上位に入り続け、またカラオケでも今年に入ってから週間首位を獲得し確固たる地位を築き上げた。その結果ストリーミング、MV、カラオケの3部門で年間1位、ダウンロードでも年間2位に入り年間1位を獲得した。またミセスは年間ベスト10に5曲を送り込んでおり、10周年を飾るに相応しい結果となった。
ただ一方でミセスの生命線であるストリーミング再生数に対し、下半期からリカレント・ルールが遂に導入され、総合チャートに52週以上チャートインした曲に対しストリーミングでのポイントが割り引かれる(推定値で38%前後)措置が施行された(個別のストリーミングチャートではこれが適用されない)。この年間ランキングではルール施行後の下半期以降に適用されているものと見られているが、予測筋によると、もし上半期に遡り適用させたとしても上位7位までは変動が無いと見られている。リカレント・ルールについては10月下旬に2026年度に入ったアメリカでは、より条件が厳格化されたが、フルシーズンこのルールが適用される2026年度の結果次第では、日本でもアメリカ同様より厳しい条件に置き換わる可能性があるだろう。
年間ランキングでの注目は9月15日にリリースされた米津玄師の「IRIS OUT」が、たった10週間で年間4位にまで上り詰めているところだろう。ストリーミングにおいて日本の歴代記録を更新する等、今季終盤のチャートで猛威を振るったのは記憶に新しいところだが、逆に言えばこの曲が短期間で年間4位に食い込めるほど、今年は特段目立った曲が多くなかったのではないかとの疑問も浮上する。
そこでまず、2020年以降の年間ストリーミングランキングでの再生数を1位、5位、10位、20位の数字で比較した表を用意した。

※ 20位の数字が発表されるようになったのは2023年以降
これを見ると10位、20位の数字は昨年とあまり変わりはないが、5位の数字が昨年と比べ大きく落ち込んでいる。10位以下については昨年と遜色ないが、トップレベルの水準が昨年と比べ低く、そこがやや物足りなさを感じる要因ではないかと思われる。なお年度最終週に年度内にリリースされた幾田りら「恋風」が1億再生を突破しており、この曲の年間ランキングが56位だったため、年間1億再生が56曲以上ある事になるが、これは一昨年の58曲を下回っている(昨年は正確ではないが、60曲以上達している)。また週間チャートにおいても10位の数字が一時期と比べ低くなり、500万を下回る週が多くなってきており、Spotifyでもデイリーランキング50位の再生数が低下しつつあるのが確認できる。この影響が来年にも出て来る恐れがあり、場合によってはストリーミングの上位再生数は2024年をピークに縮小する可能性もある。
そこで「IRIS OUT」が猛烈な勢いでチャートを駆け上がったのであれば、年間上位に食い込むのは必然であり、更に「今年のヒット曲って?」との疑問に直面する。そもそも昨春リリースの「ライラック」が年間1位なのだから、今年リリースの曲がミセスですら「ライラック」を上回れていない事になる。ただその「ライラック」の再生数と順位がここまで維持できているのは必然なのか異常なのか。そこは見極める必要がある。しかしそうそうYOASOBI「アイドル」やCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」クラスの曲が出て来る訳では無い。となると、今年は特大クラスとまではいかないが、大ヒットと呼べる曲が少なく、中間レベルが多い感じになっているのだろう。
Billboard Japanの総合チャート、Hot 100では週間チャートであればCD売上を中心としたポイントで1位を取る事は可能であるが、上半期、年間ランキングとなるとストリーミングでの積み重ねが最重要となっている。これは2017年度以降、各要素での年間100位以内が、Hot 100の年間100位以内にどれだけ入っているかを見れば分かるだろう。

2017,18年ではCD売上、DL売上、ストリーミングが拮抗していたが、2019年からCD売上の影響力が減退し、2020年以降はストリーミングでの年間ランキングが必須と言える状況となっている。今年はリカレント・ルールの影響があってか、昨年ほどの数字にはなっていないが、それでも最重要項目である事には違いない。
しかし今年に入りそのストリーミングでの人気を経由しないSNSやショートムービーをきっかけとしたヒット曲も登場しつつある。代表例としては今年の紅白に初出場を果たしたM!LKの「イイじゃん」と、紅白内定記事も出ていたAiScReamの「愛♡スクリ〜ム!」(後者は紅白ではなく、同日の「ももいろ歌合戦」に出場する)であり、この2曲はBillboard Japanの年間ランキングを見ても、Hot 100どころか、要素別でも年間100位以内に入っていない。最近では新曲のサブスク配信を行っていないハロプロ勢のJuice=Juice「盛れ!ミ・アモーレ」もこれに加わる可能性が有る。現在のBillboard Japanは(もっとも、本家アメリカのBillboardもだが)ショートムービーに対応しておらず、CUTIE STREETやCANDY TUNE、FRUITS ZIPPERのようにそこからのヒット曲がストリーミング再生等の集計要素で結果を出さない限り捕捉できないため、そこを経由しないとチャートの結果として反映されないようになっている(ただここで上げた3組が最近はCD売上を重視するスタンスに切り替わっている点は気にするべきか)。ショートムービーについてはランキングの制作予定がある事を昨年の時点で公式ポッドキャストで言及していたが、現状その続報が無く、交渉が難航している可能性がある。ヒットチャートがヒット曲を見落とすような事があってはならないのだが、ストリーミング再生を経由しないヒット曲がこれから更に出て来るとなると、対応を迫られるだろう。ひょっとしたらそれが、ストリーミング再生数の低下を招いている要因の一つなのかもしれない。
こうなると2025年は、ストリーミングが絶対的な要素と言える地位が揺らぎ始めた年になる可能性がありそうだ。更に言うと、一次選考の多くをBillboard Japanの要素を使っているMusic Awards Japanも、チャートに表れないヒット曲を投票の対象にすら出来ない可能性まで出て来るだろう。一昔前で言えば、日本有線大賞や全日本有線放送大賞が盤売上のランキングと両立していた時代に近づくのだろうか。折しもアメリカではBillboardとYouTubeの交渉が決裂した際に「時代遅れの計算式」とYouTube側が批判したが、それと同じ事が日本でも起ころうとしているのかもしれない。
ダウンロード売上についても軽く触れておきたい。米津玄師「Plazma」が年間1位となったが売上は16.9万であり2年前であれば5位にも入れない数字となっている。

このようにダウンロード市場の減退は顕著であり、総合チャートでも影響力が薄くなっているのが現状である。ただCD売上と比べ年間ランキングに入るような曲がHot 100でも入っているのは、他の要素が伴っているためであり、ダウンロードだけで得られるポイントは売上と共に減少しており、最近では週間チャート1位が1万に届かない、10位が2,000を割り込むと言ったケースも散見し、複数業者に跨った特典を用意したダウンロードキャンペーンが影響を強めるようになると、CD売上で見られる特典商法が横行する無秩序で無意味なランキングに変わり果てる恐れすらある。とは言え衰退を食い止める要素もなく、形だけが残る事になってしまうだろう。
年間のアーティストランキングでは、今年デビューしたHANAが5位、そのグループのプロデューサーでもあるちゃんみなが10位に食い込んだ。Hot 100の年間ランキングで今年リリースの曲を複数ベスト20入りさせたのはミセス、米津玄師、HANAの3組であり、デビューイヤーから既にトップクラスの活躍を見せており、その波及効果がちゃんみなにも表れたと言えるだろう。両者とも今年の紅白に初出場する。
最後に昨年末からストリーミングの要素が加わった総合アルバムチャート、Hot Albumsを見てみたい。年間1位はSnow Manのベスト盤「THE BEST 2020 - 2025」が164.0万枚と圧倒的なCDセールスに加え、ストリーミングでも2位に入りものにしたが、同じSnow ManでもCDのみ(配信無し)でのリリースとなった「温故知新」は106.0万枚の売上を記録しながら46位に終わっている。
トップ10を見てもCD売上で100位以内に入っているのが、「THE BEST 2020 - 2025」と「ANTENNA」(CD売上94位)、「10」(同3位)の3作のみであり、CD売上年間100位以内でHot Albumsの年間100位以内に入ったのは21作となったため、CD売上偏重だった昨年以前とは大きく異なり、ストリーミングの影響が多大に出たランキングと言える。なおダウンロードの年間100位以内は35作がランクインしていたが、こちらも楽曲ダウンロード同様売上の低下が顕著に出ている。

ただこちらもストリーミングでのポイントに対するリカレント・ルールが26週以上チャートインした作品に適用されている。アメリカではアルバムチャートにリカレント・ルールは適用されないため日本独自の要素となるが、これもフルシーズン適用となる2026年度でどのような変化を起こすのか。
あとは各々がどのように感じるか。その点は読者にお任せします。
さてここで、Billboard Japan年間ランキング上位から、25日から発表される「Green Hill Music Grand Prix 2025」選出者4組を発表します。
紅組
幾田りら (ソロでは3年ぶり2回目)
CANDY TUNE (初選出)
ちゃんみな (初選出)
YOASOBI (6年連続6回目)
白組
Vaundy (4年連続4回目)
Number_i (2年連続2回目)
back number (3年連続8回目)
BE:FIRST (2年ぶり3回目)
以上の紅白4組ずつ、計8組がBillboard Japan年間ランキング上位から選出されました。誠におめでとうございます。Billboard Japan年間ランキングからは、ワイルド・カードとなるUGCを含め11組が選出されるため、残る7組と、Green Hill Music Chartからのワイルド・カード枠5組は、当日の発表となります。
今年も残すところ僅かとなりました。今年、そして来年もこのブログからヒット曲をお届け出来ればと思います。