WBC:世界一の舞台で合間見えた強敵(とも)

 前回は憤激レポートだったので今回は心温まる話。

 日本の優勝で幕を閉じた第1回WBC。そのMVPに、この日も4イニング1失点と好投した松坂大輔が選ばれた時、インタビュアーとしてスタンバイしていた彼は果たして何を思ったであろうか。その彼とは、当日地上波でこの試合を生放送した日本テレビのアナウンサー、上重聡である。
 この二人の伝説的名勝負を覚えているであろうか。98年夏の甲子園準々決勝、PL学園vs横浜高校。あの延長17回の死闘である。松坂は横浜高校のエース、上重はPL学園のエースであった(PLはこの試合、先発は選抜で対戦した際先発した稲田、上重は7回からマウンドに上がっていた)。
 あれから7年半、松坂はその年高卒で西武に入団し、チームのエースとなる。一方、上重は立教大学で野球を続け、東京六大学リーグで完全試合を達成するなどし球界からも注目されたが、スポーツアナウンサーの道を選び03年に日本テレビに入社した(大学時に右ひじを故障したのも原因か?)。当初アナウンサーとしての技術は同期の人たちに比べかなり低かったみたいだが(まぁ、無理も無い)、徐々に功績が認められるようになり、今回WBCのリポーターとして渡米するまでになった。
 そしてこの日、一番お気に入りのスーツで登場した上重アナ。MVP選手のインタビューの相手は最大の強敵(とも)、松坂。なんと言うめぐり合わせであろうか。死闘を繰り広げた二人には、やはりそれ相応の勝負運というものがあったのだろう。しかしこの後上重に災難が。そのスーツ姿のままシャンパンファイトに参戦するハメになってしまい、日本代表(特に松坂世代)の面々から手荒な歓迎を受けてしまう。スーツは犠牲になってしまったが、日本テレビでは巨人以外の選手との交流が希薄な中、この機会を手に入れた上重は改めて只者ではないことを証明したといってもいいだろう。