Sexy Zoneの三つの大罪

 来る11月20日Sexy Zone8枚目のシングル「君にHITOMEBORE」がリリースされる。ところがこれを巡り大きな波紋が広がっており、これが日本の音楽シーンにおける大きな転換点になる可能性すらありえそうだ。

 Sexy Zoneは2011年のデビュー当初5人組で活動を開始したが、今年に入り3人を中心に活動すると発表。もっともデビュー当初からその3人が中心となりプロモーションが行われており、ユニット内の取り扱われ方に格差が生じていたようだ。そこでの3人体制発表に一部のファンが蜂起。先月リリースの「男 never give up」リリース時にデビュー曲である「Sexy Zone」を購入し、“5人の”Sexy Zoneを求める行動を起こした事はこのブログでも取り上げました。今回のシングルもその3人のみでのシングルとなります。

 では何が問題なのか。もちろん上記で取り上げたようにファンが造反している状態である事もそうですが、事もあろうに同じ日にMr.CHildrenがシングルをリリースします。しかもその相手に対しSexy Zoneは実質33種リリース(Mr.CHildrenは1種)と超多種リリースを仕掛け、更にその33種の中にはMUSIC CARDを含むパッケージも含まれており、これが更なる波紋を広げています。

 MUSIC CARDは楽曲をダウンロードするための言わば用紙であり、主にEXILE系のアーティストがCDと同封する形でリリースしているが、このMUSIC CARDもオリコンでは1枚の売上(MUSIC CARD同封シングルを購入すると2枚の売上として計上される)になっているのではないかとの疑惑が浮上しています。

 先日同じジャニーズ系のV6がMUSIC CARDを同封したパッケージをリリースし、オリコン調べでは売上を大幅に上昇させました(6.1万枚→9.5万枚)。しかしサウンドスキャン調べではこのシングルの売上は6.7万枚となっている。ジャニーズ系はオリコンサウンドスキャンの売上差はそれ程無いのが一般的だが、この3万枚近い売上差はMUSIC CARDをカウントしたかどうかの差でもありそうだ。なお、よくMUSIC CARD同封シングルをリリースしているEXILE系はオリコンサウンドスキャンの売上差は大きい。EXILE系の場合はサウンドスキャンが集計しない一般流通していないパッケージでの売上もあり一概には言いにくいが、MUSIC CARDをカウントしているかどうかの影響は少なからずありそうである(サウンドスキャンの場合は1パッケージごとの集計なのでMUSIC CARD分をカウントする道理は無い)。

 となるとMr.ChildrenSexy Zone、どちらが週間1位を取る可能性が高いか。多勢に無勢とはまさにこの事である。

 しかしこの事についてオリコンから一般に向けた正式なリリースが見当たらないのは不信感を募らせる。あえて抜け道を作り、結果が出れば万々歳で済む問題なのだろうか。以前とは違い音楽を取り巻く環境も変わり、オリコンが全てではない事は明白である。しかしオリコンを取り巻く利権・権力に音楽界・芸能界が持ちつ持たれつの関係となり、未だオリコンチャートが音楽界の基準として取り扱われているのが現状である。しかもマスコミはいかなる手段を用いてCDを売ったとしてもオリコンの結果しか伝えていない。ジャニーズやavex系アーティストがかつて強引にオリコン週間1位を取るためにドーピングとも揶揄された週末の突発イベントにおける売上の急騰を伝えたメディアは皆無である事から、仮にSexy ZoneMr.CHildrenを下しオリコン1位を取ったとしてもその背景はまったく伝えず「大快挙」としか伝えないだろう。。

 いや、それが“3人の”Sexy Zoneを世に広めるためだとしたら…。20年近く日本の音楽界を引っ張ってきたMr.Childrenに対し、あまりにも失礼では無いだろうか。そしてそうとしか伝えないメディアもまた、その行為に加担しているとも言えるのではないだろうか

 ちなみにアメリカではこのような複数種購入を煽るようなCDに関してはチャートから除外する事を各レコード会社に通達している。日本でこれが出来ないのは、やはり“オリコンを取り巻く利権・権力”の問題が横たわっているからだろう。そしてこの状態が続く限り、オリコン以外のチャートが日の目を浴びることも無いだろう。

【参考】変化を恐れず、時代と併走したチャートを生み出す(米ビルボードのチャートディレクター、シルビオ・ピエトロルオンゴ氏のインタビュー記事)
http://www.musicman-net.com/focus/47.html


 いちおうフォローしておくが、この件に関してSexy Zoneのメンバーは悪いとは思えない。このような事を企てたジャニーズ陣営とポニーキャニオン、そしてMUSIC CARDを売上枚数に加えているかどうかをはっきりさせていないオリコンにも問題はあるだろう。今回の件が日本の音楽界を取り巻く現状を見直すいいきっかけになってもらいたいものだが…。「退屈なヒットチャートに延髄チョップ」とはMr.Childrenが歌っていたが、まさかこんな形で延髄チョップを食らうとは思っても見なかっただろう。