ビルボードジャパン年間チャート 2016 その2

 前回はAKB48を取り上げるだけで終わってしまったので、今回はそのつづきです。

 まず改めてシングル総合チャートとなるHot 100の年間チャート上位を見ていきます。今回はAKB48以外の楽曲に関して、Billboard JAPANでどのようなチャートアクションが見られたかをグラフにしたCHART insightにリンクしています(※「PPAP」のCHART insightが昨年度と今年度で分割されているため、ピコ太郎の部分に2016年度、「ペンパイナッポーアッポーペン」の部分に2017年度以降の部分がリンク)。

1位 AKB48「翼はいらない」(CDセールス1位)
2位 RADWIMPS「前前前世」ダウンロードラジオ1位)
4位 AKB48「君はメロディー」
5位 SMAP「世界に一つだけの花」ツイート1位)
6位 ピコ太郎ペンパイナッポーアッポーペン」(MV再生回数1位)
7位 AKB48「LOVE TRIP」
8位 AKB48「ハイテンション」

16位 嵐「I seek」ルックアップ1位)


 AKB48以外で見てみると、9位の星野源「SUN」は昨年末からの勢いをそのまま継続させた感があるが(Billboard JAPANの年間チャートは前年12月分がまるまる翌年度に入るため昨年末の影響が出る)、それ以外の5曲はいずれも昨年を代表する楽曲がランクインしているのが良く分かる。

 興行収入200億円を達成したアニメ映画「君の名は。」の「前前前世」はRADWIMPSがこの映画の楽曲を担当すると発表された4月時点からツイートでのポイントだけで総合6位にランクイン。その後(なぜか1週空いているが)7月に入りラジオでのオンエアされ配信が解禁されると一気に総合順位を伸ばし、アルバムリリースと共にMVも公開。総合首位獲得は10月3日付の1度のみだが、7週連続ベスト3入りを含め最新の1月30日付まで現在26週連続(年度〆まででは18週連続)で総合トップ10入りを継続している。年間ではダウンロードラジオで1位となっているが、ツイートMV再生回数でも2位になっており、CDセールスルックアップでのポイントが無いにも関わらず年間総合2位を獲得するに至った。当初から楽曲面でも話題となっていた映画の記録的大ヒットがもたらした相乗効果とも言えるだろう。

 ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」主題歌となった星野源「恋」の初登場はラジオで楽曲が解禁された9月26日付。この時点で年度〆までは11週しか無かったものの、翌週にはCDリリースを前にMVが解禁。この2週間後にCDがリリースされるが、この週は突如シングルをリリースしたHi-STANDARDが総合首位を獲得し星野源は2位に甘んじる。しかしその翌週、配信が解禁されるとドラマの好調も相まってこの週にシングルをリリースした関ジャニ∞を下し総合首位を獲得。CDリリースから年度〆までの8週間で1位3回、2位4回、3位1回と抜群のチャートアクションを見せつける結果となった。その内容も圧巻で2017年度に入り公開された週間総合ポイントでは右肩上がりの推移を見せ、年間1位要素は無いものの、ラジオルックアップで2位、ダウンロードツイート3位、ストリーミング4位MV再生回数5位とCD売上以外の6部門でベスト5入りし年間総合3位となった。これは年度〆までの期間が短かった事を考慮すれば驚異的と言っていいだろう。楽曲の好評もさることながら、ドラマの好調、更にMVで見せた「恋ダンス」の流行と多方面に波及し、それは前作「SUN」のチャート再浮上にも繋がっている。そして最新の1月30日付時点で7週連続1位を記録し、今年の年間チャートで1位を取る可能性が高くなってきている(計算上、現時点でCD売上換算にして230万枚分のポイントが今年度分として計上されている)。今年はこの曲をどんな曲が上回れるのか。目標とされる存在となりそうだ。

 昨年1月に発覚したSMAPの分裂・解散騒動は結局昨年をもってグループが解散する事態に発展。多くのファンが悲しむと同時に、事務所寄りの報道や本人たちのコメントが無いまま時間だけが過ぎていった点においてやるせない思いをしたファンも多くいただろう。その最中、解散を阻止する思いを伝えるべく展開された世界に一つだけの花」購買運動では累計売上300万枚を達成する大記録が達成。グループとメンバーにゆかりのある日にCDを集中購買する運動その呼びかけとこの曲によせるツイートにより、騒動発覚以降ツイートでは一度も週間20位以下に落ちる事無く、総ツイート数は1,958,709回にのぼり年間1位。また13年前のシングルでありながら年間シングル売上チャートでは17位に入り年間総合では5位にランクイン。ネガティブな要因での動きではあるが、これもまた昨年を代表する事件であり楽曲となったのは間違えないだろう。

 世界的ミュージシャンであるジャスティン・ビーバーのお気に入りMVとして紹介されるや否や、たちまち日本でも大反響となったのがピコ太郎の「ペンパイナッポーアッポーペン」。Hi-STANDARD星野源がCDをリリースした同じ週に、たった1分8秒のMVが1週間で約1300万回も日本国内で再生されこちらも突如として総合4位に初登場。今思い返せばこの週の上位は今年を代表する面々が並んでいるとも言える。配信での売れ行きは(後にアルバムもリリースされるがこちらも)それほどでも無いもののMV再生回数は記録的な数字を重ね、なんと本家アメリカのThe Billboardでもランクインし、11月14日付ではMステ出演効果もあり、1週間で26,777,714PVを記録。この週では星野源Kinki Kidsを下し週間総合1位を獲得している。年間では年度〆までのおよそ8週間だけで142,142,756PVを記録しMV再生回数年間1位ツイートでも年間4位に食い込み年間総合で6位にランクイン。こちらも前前前世」同様、シングル化されていない曲ながらもCDでの要素以外でのポイントでAKBの一角を崩す結果となった。

 そして年間10位に入ったのが欅坂46のデビューシングル「サイレントマジョリティー」。CD売上では年間16位と他の秋元一門でこれを上回っている作品はあるものの、ツイート6位ルックアップ7位MV再生回数15位は、いずれも年間トップ10入りしているAKB48の楽曲をも上回る順位をマークしており、順位は見えていないが、配信においても上回っているだろう(レコチョクでは年間33位)。CHART insightで見るとラジオ以外の要素が初登場以降100位圏内で10か月近く経った現時点でも推移し、なんと年末から各要素が再浮上しているのが見て取れる。CD売上一辺倒と見られる秋元一門だが、この曲に関してはそれは当てはまらず、広く長く拡散しているようだ。これは先輩である乃木坂46や、今年デビューを控えるNGT48にとっては脅威と言えるだろう。CD売上以外の面でも注目するべき存在となるか推移を見守りたい。

 ルックアップで年間1位となった嵐「I seek」は年間総合で16位。嵐はルックアップにおいて2年連続で年間ベスト3を独占する強さを見せていたが、CD売上における計上範囲の変更やCD以外の要素が強さを見せた作品の台頭により、楽曲配信、公式MVの公開が無いジャニーズ勢にとっては厳しい戦いを強いられ、昨年まで年間上位を席巻していた嵐ですら年間ベスト10に入れない結果となってしまった。特にこのシングルは80万枚以上の売上がありながら総合でこの順位となってしまった事は、今後年間チャートでの上位進出が難しい状況に追いやられたとも言えるだろう。CD売上に徹するか、それとも拡散力を身に着けるか。ジャニーズ勢にとっても今年が大きな転換点となるのか見守りたい。


 全体的な部分に関してはまた後日書きたいと思います。