第50回 日本有線大賞 ノミネート発表と…

 11月9日に年末恒例となった日本有線大賞のノミネートが発表され、今回をもってテレビ放送を終了する事が同時に発表された。

 1968年にスタートした(他にもベストヒット歌謡祭の前身である全日本有線放送大賞日本作詩大賞も同年からスタート)この賞は今回が50回目を迎えるが、その節目にこのような発表があったのは低視聴率だけが原因ではないだろう。

 日本有線大賞は有線業界シェア2位のCANSYSTEMUSENとは無関係どころか裁判沙汰を起こしたぐらいの敵対関係)に寄せられたリクエストデータのみを参考に選定される賞であり、音源の売上等の他要素は一切関与しない。また大賞候補となる有線音楽優秀賞のノミネートは、ポップス系と演歌・歌謡曲系から半々(最近は4組ずつの計8組だったが、今回は5組ずつ計10組)となっている。これにより音源の売上とは異なるメンバーが顔をそろえ、売上とはまったく異なる舞台で競い合わせる事により独自性を生み出していた。

 しかし今回の放送終了は時代の波に飲み込まれた結果ではないだろうか。レコード盤がカセットテープに変わり、携帯型の音楽プレーヤーの出現により好きな曲をいつでも聞ける時代に発展。時代は進みカセットテープがCDに変わり、今や配信からストリーミングの時代へと変わっている。これにより楽曲を手軽に揃えられるようになり、店舗側もわざわざ有線と契約する必要性も無くなりつつなっていった。今、街角で有線のチューナーを見かけるだろうか。それがあったとしても、それが何だか分からない世代も出つつあるのではないだろうか(今風に言えば「若者の有線離れ」か)。それがUSENならともかく、USENと比較してシェアが1/5弱でしかないCANSYSTEMとなれば尚更である。
 そしてオリコンの存在感が大きくなったのも影響しているだろう。現在はビルボードジャパンにその地位を奪われているが、オリコンビルボードジャパンの週間ランキングは報じられても、有線の週間ランキングがマスコミにより伝えられる事はほとんど無い。これにより有線での流行曲と、一般的に知られている音楽チャートの上位との乖離が生じ、それが違和感となって視聴率の低迷に繋がっているのではないだろうか。

 それを象徴したのが2011年のふくい舞の大賞受賞だろう。一般的に知られている音楽チャートを軸にして考えれば「まったくの無名歌手であり知られていない曲」と言えるが(実は東日本大震災直後のMステには出演していた)、CANSYSTEMのチャートでは半年に渡り上位をキープしており、これだけを参考にすれば「大賞候補の一角」と充分に評価できる内容だった。とは言え大多数の人はそれを知っているはずもなく、またバックボーンの存在(具体的に言えばバーニングの周防社長のお気に入り)もあり、あり得る範囲での大賞受賞だったはずが猛烈なバッシングに遭う結果となってしまった

 ある意味この結果が、日本有線大賞の存在意義そのものを否定された結果であったかもしれない。

 そして有線業界にとって大きな脅威となったのがサブスクリプション音楽配信サービスの本格的な参入ではないだろうか。楽曲は各業者毎に限られるものの有線より安価に導入でき、任意の選曲も可能。更にスマホでいつどこでも聴けるこのサービスは、有線に取って代わる充分な存在と言えるだろう。

 これらの要因が重なり合った2017年。ちょうど50回目を迎えたのは、ある意味潮時とするにはいいタイミングだったのではないかもしれない。また有線大賞の放送は終わるが、別の形でもってこの賞を引き継ぐ新たな企画を予定しているとの事。続報に期待したい。最後の放送となる12月5日は例年より長い4時間の生放送。見るべきは今回の大賞争いより、有線大賞50年の栄枯盛衰の中で愛された名曲の数々とも言えそうだ。


 ところで、チャート要素改変後もチャート要素としてCANSYSTEMのリクエストデータを取り入れているCDTVは縁が切れる訳でがどうするんだろうか??