存在そのものが誤解を招くオリコン合算ランキング

 オリコンが今季、重い腰を上げてCD売上とダウンロード売上、ストリーミング再生回数を加えた合算ランキングをシングル、アルバム両部門でスタートさせた。
 しかしそのポイント算出方法を見て失望した人も多いのではないだろうか。日本の音楽界を示し続けてきたオリコンは、ランキング発表前にしてその信頼性を更に自らの手で貶める結果となってしまったのである。
 
 ここで改めて集計方法を確認してみたい。
 
集計対象(投稿時点での集計対象となるため、現在は追加されている場合がある。最新の情報は必ず公式サイトで確認する事)
CD売上(オリコン調べ)※精査を混んでいるため、純粋なCD売上では無い作品もある
ダウンロード売上(iTunes Store / オリコンミュージックストア / mu-mo / music.jp / mora / LINE MUSIC / レコチョクオリコンミュージックストアとmusic.jpはBillboard JAPANの集計対象外
ストリーミング再生回数(Apple Music / AWA / KKBOX / dミュージック月額コース / LINE MUSIC / Rakuten Music / RecMusic)※dミュージック月額コースはBillboard JAPANの集計対象外
 
ポイント換算
・合算シングルランキング
CD売上(1枚=1Pt.)DL売上(1バンドルDL=1Pt.、1単曲DL=0.4Pt.)ストリーミング再生数(1回=1/300Pt.)
※ CDシングル単位での集計となるため、単曲DLストリーミングは収録曲全曲の回数が対象。CDシングルに収録されていない曲は単曲DLストリーミングのみとなり1曲単位での集計となる。
 
・合算アルバムランキング
CD売上(1枚=1Pt.)DL売上(1バンドルDL=1Pt.).、ストリーミング再生数(1回=1/1,440Pt.)
※ 単曲DLはBillboard JAPAN同様集計対象外
 
 端的に言ってしまえばシングルランキングは「CDシングル単位での集計」と言う点で論外と言えるだろう。例え10万DLを記録した曲があったとしても、上記の換算ではCD売上4万枚相当にしかならない。週間で10万DLを記録する例は稀であり、それをたった万枚で覆されてしまうのは明らかにアンバランスである。またバンドルDLの数字も決して高くなく1万行く例も年間で少ないのが現状。ストリーミングもBillboard JAPANと比べ集計対象が少なく、計上される再生回数も少ないため、(投稿時点で)現状1万枚の効果にも至った例が無い。従ってCD売上で(週間ランキングで2万枚ぐらい)差が付いてしまった時点で逆転はほぼ不可能なランキングと言える。
 さらに年間単位で見ても昨年のダウンロード年間1位「Lemon」は179.7万DL。ダウンロードでは歴史的大ヒット曲と言えるこの曲ですら71.9万枚相当にしかならず、CD売上を加算したところでAKBや乃木坂に及ばない結果となっている。「Lemon」が別格として見ると2位の「U.S.A.」が54.1万DL21.7万枚相当)、3位の「瞬き」が43.4万DL17.4万枚相当)となり、前者はストリーミングのポイントを足しても嵐に迫れるかどうか。後者はHey!Say!JUMPと互角程度となる。週間ランキングでも年間ランキングでもCD売上で大きく差を付けているCDには敵わない結果が、ポイント換算を発表した時点で判明してしまっているのである。
 
 そもそも「CDシングル単位での集計」と言うコンセプトそのものが間違えていると言っていいだろうし、まるで「CD売上を中心にしないと困る勢力により作られたランキング」と言われても仕方が無いだろう(言わずもがな、今のオリコンを集計方法の変更まで支えているジャニーズの存在が大きいのだろうが…)。ただ「1単曲DL = 120St.」と言う換算は世界的に見ても決してズレているものではない。それだけに「CDシングル単位での集計」と言うコンセプトがあまりにも残念過ぎて発表する意味が無いどころか、オリコンの冠名が付いている事により誤解を招き、世論をミスリードしかねないランキングとまで言えるだろう。
 
 となるとアルバム合算ランキングは正常なのか? と言えばそうでもない。
 
 先に取り上げたようにバンドルDLそのものの数字がCD売上に比べ低すぎる(1位が2,000DL以下のケースはザラにある)、また海外のようにアルバム収録曲全曲がストリーミング配信している訳でも無いため、ストリーミングのポイントも伸びない傾向にある。
 
 結局はアルバム合算ランキングもCD売上で(5,000枚程度の差があれば)ほぼ決まってしまうランキングとなっている。
 
 ではなぜこのような無意味以下のランキングを作ってしまったのか。と言う以前の問題として、オリコン自体が業界向けのランキングであり、それを一般向けに一部の情報を開示しているだけなので、一般とは志向が異なると言ってしまえばそれまでである(ビデオリサーチの番組視聴率も同様)。あくまで業界向けのランキングを見せられているとなれば、これが業界の意向を反映させたランキングと一歩引いた目で見られるのではないだろうか。結局のところ音楽業界が一番重視しているのはCD売上であり、ダウンロードストリーミングはオマケ程度、取るに足らない存在と言う意思が見え隠れするのではないだろうか。それが一般の間隔とズレているのであれば、このチャートの存在価値こそオマケ程度、取るに足らない存在と言えるだろう。その証拠に、オリコンには音楽ジャンル別(洋楽アルバム、演歌・歌謡シングル、ROCKシングル、ROCKアルバム、DANCE & SOULアルバム、インディーズシングル、インディーズアルバム、アニメシングル、アニメアルバム)の週間ランキングもあるが、これらは合算ランキングがスタートしても従来のCD売上のみでのランキングとなっている。この事からもオリコンが旧来のCD売上のランキングをメインとし、合算ランキングをメインとして扱うつもりが無い意思が見え隠れしているようにも思える。
 
 日本人はオリコンと言う存在そのものを忘却するべきではないだろうか。むしろそれが出来なければ日本の音楽界が今後発展しないとまで言えるだろう。いつまでも古い基準に囚われてはいけない。オリコンの役目は、平成と共に終わらせなくてはいけない。