Billboard Japan 2023 年間ランキングを見る

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 ここでは具体的な数字を見ながら今年の年間ランキングを改めて見ていきたい。

 

ダウンロード

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 この記事でピックアップされている上位20曲のうち、12曲はアニメタイアップ曲となっており、これは昨年の10曲を上回り、前記事でも取り上げた通り傾向が増している。ただ売上で見ると昨年10位の「Subtitle」が15.4万だったものが、今年の10位「SPECIALZ」は11.6万まで減少している。1位になった「アイドル」は51.0万の売上を記録したが(年度内に50万以上の売上を記録したのは2020年度以来3年ぶり。この時は上位5曲が50万以上だった)、ここ最近では週間1位が1万未満の週もあり、ダウンロード市場の衰退化が顕著となっている。

 諸外国でもストリーミング市場の拡大に伴うダウンロード市場の衰退は顕著であり、よくK-POPが「**ヶ国のiTunesチャートで1位を記録」と見出しを立てているが、水準の低くなった「昔の名前」のチャートであり、その価値は以前ほどでは無い。日本でもコロナ禍に見舞われた2020年以降からその傾向が出ており、水準の低下に伴う週間ランキング上位の二極化(突発的売上を記録する曲と継続的な売上を記録する曲が入り乱れている状態)が進んでいる。ただCD売上のランキングとは違い、まだ継続的な売上を記録している曲が上位に残りやすく、その累計売上が突発的な売上を上回っているため、長期的な売上については水準が落ちているとは言え、まだ利用価値はあるだろう。

 

ストリーミング(オーディオストリーミング)

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 再生数で見ると12位の「シンデレラボーイ」までが年度内2億再生を突破。なお年度内にリリースされ、年度最終週で1億再生がアナウンスされた「ランデヴー」が58位であるため、少なくともここまでが年度内に1億再生を記録したと見られる。言うまでもなく、キャンペーン等の突発的な再生数の水増し行為だけでは年間100位以内に入るのも難しい。

 前記事でも取り上げた通り、ストリーミング年間100位以内の曲が、総合チャート年間100位以内に91曲が入っている。これを多いと見るか妥当と見るか。また多少の改善は見られるものの、依然としてランキング上位の入れ替わりが少なく、それが総合チャートの固着化に繋がっている現状もある。保守的な国民的志向が影響しているが、これを何等かの手を打ち改めるべきか、その国民性をも反映したチャートを継続するのか。ただ2年以上前の曲が年間ランキングに残っている現状は、「他国と比べ累計再生数を稼ぎやすい」と見なされ、その価値が下がる恐れもある。繰り返しになるが、配信業者を含め、ランキング上位以外の曲に触れる機会を増やすべく何等かの対策が必要ではないだろうか。

 なお、ストリーミング年間100位圏外ながら総合チャート年間100位以内に入ったのは、上位から「Lemon」(73位)、「ちゅ、多様性。」(75位)、「ツキヨミ」(76位)、「勇者」(81位)、「地球儀」(85位)、「可愛くてごめん」(94位)、「Mainstream」(96位)、「サウダージ」(99位)、「踊」(100位)の9曲となっている。

 

年間総合チャート

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 改めてだが、「アイドル」はダウンロード、ストリーミング、ラジオ、MVの4部門で年間1位となり、その内容も圧倒的だった。なおカラオケの年間1位は「怪獣の花唄」となっており、「アイドル」は3位だった。

 旧ジャニーズ勢では唯一の年間ランキング入りとなった「ツキヨミ」はMVで「アイドル」に次ぐ2位。この曲は昨年11月9日リリースで今年度リリースの曲ではないため初動売上のポイントが含まれていないが、MVの再生数でそれをカバーし、年間ランキング入りを果たした。なおシングルCDの年間売上1位は「Life goes on/We are young」だが、CD売上での獲得ポイントは「どうしても君が好きだ」が突発的な再出荷もあり年間1位となっている。ただCD売上100位以内から総合チャート年間100位以内に入った曲は5曲のみであり、ルックアップやツイート要素の廃止が影響しているように見える。もちろん大量のCD売上に対しポイントを抑制するルールが有るものの、CD売上が他の要素に影響しなければ、それはヒット曲とは呼べないだろう。

 ちなみにCD売上100位以内から総合チャート年間100位以内に入った曲は「アイドル」、「絆ノ奇跡」、「ツキヨミ」、「地球儀」、「Mainstream」の5曲となっている。

 

 

アルバム年間総合チャート

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 最後に簡単にアルバム総合チャートについて。Hot 100同様ルックアップの要素が廃止され、CD売上とダウンロード売上(バンドルのみ)の2要素のみとなってしまったため、どうしてもCD売上の影響力が強いランキングとなってしまっている。更に言えばビルボードチャートの基本理念である「所有と接触」の「接触」の部分がルックアップの廃止により失われてしまい、チャートそのものの存在意義についても問われかねない状態となってしまった。

 これに対し諸外国同様、単曲のダウンロード売上とストリーミング回数を加えるべきとの声もあるが、諸外国はアルバムチャートがメイン、日本ではシングルチャートがメインだった歴史背景もあり、アルバム1枚単位より、日本では1曲単位での評価が重視されていたため、アルバムチャートでは収録曲による影響を考慮しない形がとられたと思われる。

 しかしそれもルックアップの廃止によりHotの冠名を付けるだけの要素が無いチャートとなってしまっては価値も無くなってしまう。諸外国ではアルバムもCDでリリースされないものが多いためパッケージ単位での集計だけでは不十分とされるが、日本では現在でも利益の面からアルバムはCDでリリースされるものがほとんどである。それを手にれる価値をCD売上とバンドルダウンロード売上だけで判定していいものか。アルバム総合チャートの廃止まで含め、アルバムチャートは岐路に立たされている状況となっている。

 

 その他、今季新設されたボカロ曲の年間ランキングを含めこちらからご覧いただけます。

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