Billboard Japan Hot 100 2021年間ランキングから見える事

 先ほどBillboard Japanが、2021年度の年間ランキングを発表。シングルチャートとなるHot 100の年間ランキングでは優里「ドライフラワー」が年間1位を獲得した。

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 この年間ランキングを見て分かる事を色々と述べていきたいと思いますが、まずは前段階としてBillboard Japan Hot 100は2021年度において仕様変更を繰り返しており、まとめると以下の通りとなります。

 

年度初め:MV再生数からUGCを除外UGCの再生数は別途新設チャートTop User Generated Songsで発表。

3月(第14週以降):CD売上ダウンロード売上ストリーミング回数MV再生数のポイント換算の変更。CD売上ストリーミング回数は下方修正ダウンロード売上MV再生数は上方修正された。なおこの時期、CD売上でのポイントに対する係数処理が上方修正されている傾向が見られた。

6月(第27週以降):CD売上でのポイントに対する係数処理の適用下限が変更。週間29万枚から9万枚に一気に下方修正される。

9月(第41週以降):ラジオルックアップツイートのポイント換算の変更。ラジオは上方修正ルックアップツイートは下方修正された。特にルックアップは大きくポイント換算が引き下げられた。

 

 これを踏まえて、見ていきたいと思います。

 

  • 音楽配信の優位性が顕著に。一方で存在感を失うCD売上上位勢

 2021年度においては音楽配信の影響力が更に増した結果となっている。特にストリーミングに関しては、Hot 100年間ランキングの上位11曲とストリーミングの年間ランキング上位11曲が同じ顔触れ(順位は一部異なる)となっており、またHot 100年間ランキングのベスト10のうち(「群青」を除く)9曲がダウンロードでも年間トップ10入りしている

 一方でCD売上を伴う形でHot 100年間ランキングのベスト10に入っているのは「炎」、「怪物」、「虹」の3曲だけ。残りの7曲はシングルCDとしてリリースしていない曲となっている。

 ではHot 100年間ランキングに入っている100曲の中で、CD売上、ダウンロード売上、ストリーミング回数でも年間ランキングに入っている曲がどれぐらいあるか。データが取れる2017年以降のデータを見てみたい。

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Billboard JAPAN Hot 100 2021 ランクイン比較

 昨年コロナ禍の影響もありストリーミングからの年間ランキング進出が一気に増えたが、今年は更にそれを上回り、ストリーミングの年間ランキングに入っている曲のほとんどがHot 100の年間ランキングに進出している結果となった(1~73位までHot 100の年間ランキングに入っている)。その一方でCD売上からの年間ランキング進出は更に減少。ルックアップのポイント換算大幅減に加え、2022年度開始時点で係数処理の適用下限が更に引き下げられたため、もはやCD売上だけでは年間ランキングに入るのも難しくなりそうだ。なおダウンロード売上からの進出が増えているが、CD売上同様市場規模の低下が著しく、これはポイント換算の上方修正による影響が大きいだろう。

 

  • ストリーミングの影響により、今年のヒット曲が見えにくくなりつつある

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 ストリーミングの年間ランキングに入っている100曲中89曲がHot 100の年間ランキングに進出しており、Billboard Japanの年間ランキングに入るにはストリーミングが不可欠な状態になったが、そのストリーミングでは一向に順位変動が活発化しない現象が続いている。Hot 100の年間ランキングトップ10のうち、今季中にリリースされたのは「怪物」と「Butter」のみ。30位以内で見ても半数以上は昨年以前にリリースされた曲となっている。ただこの中には今季に入ってから軌道に乗った曲もあるため、一概に昨年以前のリリースと言っても地道に上り詰めた曲もあるためリリース日だけで判断してはいけない部分もある。

 とは言え、ストリーミングの順位変動が乏しい現象により、昨年以前のヒット曲が上位に残り続け、今季ヒットした曲が過小評価されてしまっている曲も少なからずあるだろう。これについては日本におけるストリーミング(サブスク)の利用状況が欧米と異なり、マイページやランキング、履歴からの選曲が多数を占めている事による影響が大きく(欧米ではレコメンドやディスカバリーと言ったアプリの自動生成により提示されたオススメ曲を聴く傾向が強い)、これによりランキングのプレイリストに有るか無いかで再生数に明らかな格差が生じており、ランキングを停滞させる原因となっています。Hot 100をベースとしている現在のCDTVオリジナルランキングにおいて順位変動が鈍いのもこれが影響しているのが現状です。

 参考までに、これについては昨年5月時点で当ブログでも取り上げておりますが、全盛期(約10年前)のニコニコ動画でも同じような傾向が見られていたため、日本人特有の保守的思考が強く影響しているとも言えます。

amano-yuuki.hatenablog.jp

 

 2022年度開始時点ではストリーミング要素に対する仕様変更は行われませんでしたが、今年の年間ランキングであるにも関わらず、昨年以前にヒットした曲が多数残留している傾向が強く見られるのであれば、この点については改善の余地があるように思えます。ストリーミングに関してのみ、ランクイン週数や累計再生数に応じたポイントの減算、また各ストリーミング業者においてもYouTubeのMV再生数ランキングのような除外措置(YouTubeのランキングは原則公開1年経過でランキングから除外される)を検討するべきではないかと思います(とは言え、海外資本のストリーミング業者では日本独自の仕様を加えるのは難しいか)。

 ストリーミングの影響が大きくなるにつれて見えてくる弊害をどう取り除くか。それとも以前のヒット曲を打倒してこそ真のヒット曲とするのか。今年の年間ランキングからそれがどう見えるでしょうか。

 

  • 「週間1位」の価値の低下。それでも週間1位を求めますか?

 Hot 100の年間ランキング、ベスト3のドライフラワー」、「Dynamite」、「夜に駆ける」。この3曲は今季週間チャートでの1位がありません。年間ランキングトップ10のうち、今季の週間チャートで1位になったのは「炎」、「Butter」、「うっせぇわ」の3曲だけとなっており、週間1位を獲得する意味と価値が低下している結果とも言えます。ちなみにアメリBillboardの年間ランキング1位のDua Lipa「LEVITATING」も週間チャート1位がありませんでした。

 これに関しては「これだけのヒット曲が週間1位にならないのは、週間チャートの機能不全だ」との声もありますが、Billboardオリコンと違い、週間1位が2位以下に何倍、何十倍もの差を付け、年間でも逆転が不可能な差が付く訳では無く、週間上位に残り続けていれば週間1位の曲を累計で逆転する余地が十分にあるため、1週間の結果だけで週間チャートの仕様を考えるべきではないと思います。そもそも、ヒット曲は1週間だけの結果で分かるものではありません。

 とは言え前述した通り、2022年度開始時点でCD売上のポイントに対する係数処理の適用下限が更に引き下げられたため、CD売上だけで週間チャートを逃げ切るのが難しくなり、この傾向が改善される可能性もあるでしょう。

 しかしやるからには週間1位を、週間上位を目指したい。その思いもありファンがチャート対策を練って上位に進出させたい動きもあります。しかしそれが本当にファンの拡大に繋がっているでしょうか? 「1位になれば話題になる」と信じてCDを余計に買っている、ストリーミングで曲を無駄にリピート再生しているファンもいますが、それが実際ファンの増大に繋がっているでしょうか? ただの自己満足だけで、無駄な努力と出費になっていないか。今一度冷静になって考え直すべきではないでしょうか。チャート対策をすればするほど、チャートそのものの信用性は失われます。そんなディストピアに価値を見出せるでしょうか。

 どうしてもオリコンの影響が残っているために週間1位には価値があるように思えますが、オリコンBillboardは別物です。そして週間チャートの価値もまた然りです。1位1回より3位以内3回、10位以内4回の方が価値の高いチャートで1位だけを求める理由は何でしょうか。そんなものに宣伝効果はもはや無いと言えるでしょう。週間1位になれなくてもヒット曲にはなれる。今回の年間ランキングから、それを見出せなくてはいけないのではないでしょうか。

 

 

 こんな感じですかね。自動投稿なので(ひょっとしたら間違えている箇所があるかもしれません)、他に気付いたところがありましたら改めて記事にする予定です。