アルバムチャートの今後の扱いは?

 欧米とは違い、シングルでのリリースが中心となる日本の音楽業界において、アルバムチャートはシングルチャートに比べると扱いが小さくなってしまうのが現状です。しかも2018年度のアルバムCD総生産数が初めて1億枚を割り込み(8865万2000枚)、日本レコード協会調べで最もアルバムCDの生産数が多かった2000年(2億7632万7000枚)から比べ32.1%まで減少しています(下記リンクは.pdf形式なので閲覧注意)。

https://www.riaj.or.jp/f/pdf/issue/industry/RIAJ2019.pdf

 その主な要因は音楽配信によるものと思われますが、ではアルバムと言う一つのパッケージによる評価をこれからどうするのか。アルバムチャートの今後について今日は見ていきます。

 

 アルバムもシングル同様、CD売上以外の要素を含めた複合チャートが存在しています。Billboard JAPANではHot Albums、オリコンでは合算アルバムランキングがそれに当たります。

 この2つの要素を見比べると…

Billboard JAPAN Hot Albums

  • CD売上
  • ダウンロード売上
  • ルックアップ

オリコン合算アルバムランキング

  • CD売上
  • ダウンロード売上
  • ストリーミング数

 となっており、CD売上とダウンロード売上は共通しているものの、Billboard JAPANではCDの稼働数にあたるルックアップが、オリコンでは収録曲のストリーミング数がチャート要素として入っています。

 しかしこの両社のダウンロード売上は、収録曲1曲毎の単曲ダウンロード数は取り入れていません。あくまでパッケージ単位となるバンドルダウンロード数のみが対象となっており、たとえ1曲キラーチューンが入っており、その1曲のダウンロード売上が高かったとしてもアルバムチャートには反映されない形となります。当然両社とも検証を重ねた上での結論と思われますが、その点は欧米のアルバムチャートとは異なる点となります。

 それを踏まえて改めて両社のアルバムチャートを見てみると…

  • Billboard JAPAN Hot Albumsは、あくまでパッケージでの評価となっており、1曲単位での評価には対応していない(シングルチャートであるHot 100で1曲単位での評価はフォロー可能)
  • オリコン合算アルバムランキングはストリーミングで1曲単位での評価も取り入れているが、1曲単位でのダウンロード売上をフォローしておらず中途半端な感がある(合算シングルランキングではシングルCD化されていない曲は、かなり不利を伴う)

 と、一長一短なところが見受けられます。

 更にバンドル単位でのアルバムダウンロードに関しては、昨年の年間1位(星野源「POP VIRUS」)ですら10万DLを下回っており(日本レコード協会からのゴールド認定も昨年はゼロだった)、ストリーミングの普及により今後も更に下落傾向が続くと見られています(安売りしている浜崎あゆみやglobeのアルバムが年間上位に入るぐらいで、水準としては高くない)。

www.oricon.co.jp

 CD売上もDL売上も下落しているとなると、Billboard JAPAN Hot Albumsは今後もそれに合わせて水準が低下する可能性が高くなります(ただしCDに関わる要素が2つあるため、DL売上はCD売上より比重が大きい)。1曲単位での評価は含まれていないものの、ただそれはシングルチャートであるHot 100でやるべきとのコンセプトがあれば、パッケージ評価に徹したHot AlbumsとHot 100の両立は可能とも言えます。

 一方オリコン合算アルバムランキングはアルバム収録曲に全体的なストリーミング数が無いとCD売上換算には至らず(1CD(1DL) = 1,440St.)、その点が今後のストリーミング普及により改善されるかどうかにかかってきます。アルバムにのみ収録されている楽曲のストリーミング数がどのような傾向となっているのか、これが今後を分けるポイントとなりそうです。ここが整備されればBillboard JAPANとの差別化も図れ、お互いの特徴が出てくるものと見られます。

 

 また販売する側もストリーミングの普及により、特にベスト盤についてはストリーミングで配信済みの曲が多くなると、それで済ませてしまう傾向が強くなるだけに、特にCDでの販売が難しくなるでしょう。オリジナルアルバムに関しても、基本何曲かはシングル化され、配信されている曲が並ぶため、それ以外の曲でキラーチューンを作れるかどうか。そしてそれにどうチャートが対応するか。両社のコンセプトの違いが表れそうです。

 

 ちょうど今週のアルバムチャートでは、ストリーミングで強さを発揮しているKing Gnuが1位を獲得したが、このアルバムが今後(年単位で)両社でどう評価値が変わるのか。そしてアルバムチャートの今後のあるべき姿は。少なくともCD売上だけで評価する時代は、シングルチャート共々終わらないといけないだろう(参考までに今週のオリコン合算アルバムランキングの内訳をご覧ください)。

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combine album 20/01/27