ビルボードジャパン年間チャート 2016 その3

 前回、前々回と年間ベスト10を中心に見てまいりましたが、今回は年間ベスト100全体を見てみましょう。


ダイジェスト映像(非公式)


 ベスト10だけを見るとAKB48が1位を含め4作ランクインしており「オリコンとそう大差が無い」とも言えなくは無いが、それだけでは本質を見ているとは言い難い(見出しだけを見て誤解を拡散する“まとめサイト問題”に近い思考とも言える)。これをベスト100まで拡大してCD売上の年間チャートと比較して見てみると、決してCD売上上位に有利な年間チャートでは無い事が明らかになる。

Top Singles Sales Year End 2016サウンドスキャン・シングルCD売上年間ランキング)
※ その1で紹介した通り2016年2月から集計範囲を変更しているため、それ以前とでは傾向が異なる

 この2つを見比べるとかなり様相が変わっているのが見て取れる。ちなみに年間の総合チャートとシングルCD売上チャート両方でベスト100にランクインしているのは38作。上位から見ると24位のKis-My-Ft2「Sha la la☆Summer Time」以上の曲は総合チャートにランクインしているが、この24作の中での総合チャート最下位は18位のHKT48「74億分の1の君へ」が総合84位となっており、AKB48ぐらい抜群の売上があれば話は別だが、週間1位を安定して取れる売上枚数を記録しても、その他の要素が弱ければ年間チャートでは下位に沈んでしまい、決してCD売上偏重では無い部分も見ておきたい。
 一方年間総合チャートベスト100でシングルCDとして売られていない作品は29曲。「365日の紙飛行機」はカップリング曲のため、シングルCDに関与するポイント(売上とルックアップ)が入っていないのは実質30曲となり、CD売上上位でランクインした作品数に追随している。残る32作がシングルCD売上チャートで年間ベスト100に入っていない曲となるが、CDより配信で売れた曲もあれば、売上以外のチャート要素で上位に入った曲もあり、「SUN」や「トリセツ」のように前年の代表作が残っているケースもあれば、AAA「恋音と雨空」、ONE OK ROCK「The Beginning」、スキマスイッチ「奏(かなで)」のように3年以上前の曲もランクインしている。このような傾向は上位だけを見ただけでは分からず、様々な要素を取り入れた複合チャートならではのラインナップと言えるだろう。

 つづいて配信売上のランキングと比較したい。これに関してはBillboard JAPANからの公式順位が明かされていないので、レコチョクの年間チャートと比較して見ていきたい。


 年間総合チャートとレコチョク年間ランキングト両方でベスト100にランクインしているのは58曲と、CD売上上位はおろか過半数を上回る数字となった。この中で手嶌葵「明日への手紙」とAI「みんながみんな英雄」が2バージョンずつランクインしており、実質60作が総合チャートでもランクインした。CDは(1人で何枚も買えるため)初動での瞬発的な売上が累計売上に大きく影響するが、配信は複数持つ必要性が無いため、年間ランキングに乗るには長期間上位にランクインし続けなければならない。総合チャートでも瞬間的な順位では無く、長期間の上位ランクインにより、気づいた時にはCD売上上位を上回るポイントを積み重ねられた曲が多くランクインした傾向がここから見えてくる。なおこちらも上位から見ると21位の秦基博ひまわりの約束」より上の曲は総合チャートでもベスト100入りしており、この21曲の中での総合チャート最下位は13位の安室奈美恵「Mint」が総合41位。CD売上上位で総合最下位だったHKT48と比べれば総合チャートでの落ち幅が小さく、それだけ楽曲の影響力が売上以外の要素にも広まり、配信でのヒット曲が総合チャートでもCD売上上位を上回る曲数がランクインする要因となったようだ。

 2015年に三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBE「R.Y.U.S.E.I.」が年間1位となり、CD売上至上主義からようやく変革を見せつつある日本の音楽界の変動は2016年のチャートを見ても着実に進んでいる。今年は更にその流れが早くなるだろう。今年の年末にはどのような結果が待っているだろうか。


 次回はアルバムチャートとアーティストランキングを取り上げたいと思います。