昨日6月2日に発表されたBillboard Japan Hot 100で、大きな変更がなされました。公式の説明では理解が難しい方も多かったかもしれませんので、こちらの方でまとめてみましたので参考にしてみてください。
まずはストリーミングにおいて集計対象の1つだったAmazon MusicのPrime Music(Amazon Prime会員特典)での再生数を加算すると事前に発表されていました(以前はAmazon Music Unlimitedのみ集計対象)。
Amazon Musicがプライム会員向けの音楽ストリーミングのデータをBillboard JAPANに提供開始 https://t.co/kTp0agSVrG pic.twitter.com/9qx8o1Zxx8
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) 2021年5月28日
これについてはオリコンもストリーミングランキング、ならびに合算ランキングの集計対象としていますが、合算ランキングにおいてはポイント換算が通常の半分(1再生 = 1/600Pt.)となっているため、Billboard JAPANにおいても通常の有料アカウントでの再生と比べ、ポイント換算が割引になっている可能性があります。
そして驚かれた人も多いかもしれません。今週のHot 100でCD売上50.4万枚を記録した日向坂46がBTSに敗れる波乱がありました。そしてチャート発表後に公式Twitterからこのような発表がありました。
2017年以降、シングル・セールスをHOT 100に合算する際、レシオの平均値が大きく変わる週に関しては、係数を掛けて合算していました。2021年6月2日公開以降、シングル・セールスとデジタル・セールスのバランスをさらに安定させるため、係数を変更しております。今後とも、よろしくお願い致します。
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) 2021年6月2日
これだけではちょっと分かりづらいので独自の検証による見解を含めて解説していきます。
Billboard Japan Hot 100では週間のCD売上が一定数を超えた場合、CD売上により獲得出来るポイントを係数処理(割合減算)し、瞬発的な大量の売上に対し調整が加えられていました(AKB総選挙シングルの200万枚以上の数字をそのままポイント化するとエラい事になる)。この前の週までは29万枚までは売上枚数がそのままポイント化され、それ以上については間引きされ適用されていました。
今回手を付けたのは係数処理(割合減算)を行うCD売上枚数の下限の部分であり、大元のCD売上によるポイントである「売上枚数の7.625%(2月までは8.5%)」には手が付けられていません(ダウンロードやストリーミングもポイント換算が変更された傾向は無い)。今回の変更により、週間10万枚の売上でも係数処理が行われる可能性があります(アルバムチャートであるHot AlbumsではCD売上に対する係数処理は行われていない)。
追記:おそらくこんな感じ(かなりアバウト)
週間9万枚(以前は29万枚)以下の場合:売上枚数がそのままポイント換算
週間9万枚(同上)以上の場合:9万枚(以前は29万枚)から超過した分を1/10に減算し換算
(例:10万枚の場合、超過した1万枚分が1/10になり、91,000枚分がポイント換算。CD売上そのものに手を付ける訳ではない)
追記2:2022年度から上記係数処理の下限が更に引き下げられました。5万枚台から係数処理の影響を受けているようです。
昨今CDを特典で売る商法が横行しており、AKB等のアイドル系での握手券をはじめとするイベント参加権の封入や、ジャニーズ等で見られる映像ソフトの封入、また盤種によりカップリング曲を入れ替える商法など、CD売上が楽曲人気とは異なる形で引き延ばされている現状があります。ビルボードチャートは「所有と接触を合算するチャート」を理念としており、CDやダウンロード売上による「所有」の部分にある程度の重きを置く姿勢が、日本独自の商法により「楽曲人気を示す」部分において不確かな要素として表立ってしまっていた部分を今回の変更で是正させようとする狙いがあるでしょう。
ただ係数処理があったとしても、余程の事が無い限り「週間チャートに関しては」CD売上でゴリ押し出来てしまうのが現状です。今週の日向坂46も20,563Pt.であれば普通は1位を取れています。ただ今週はその「余程の事」が起こってしまいました。日向坂にとっては「相手が悪かった」としか言いようがありません(シミュレート上、この前の週のKing & Princeに今回のルールを適用しても1位に変わりは無い)。
問題はこれがどれだけの影響を及ぼすかです。ジャニーズ系のようにルックアップ(CD稼働数)がしっかり取れているのであれば、減算されるCD売上のポイントを補えるでしょう(ひょっとしたらCD売上のポイントよりルックアップのポイントの方が高くなる可能性もある)。坂道系も今回のポイントを見る限りでは週間1位を取り逃す可能性は低いと言えます。AKB48もCD売上だけで今まで通りゴリ押し出来ると思います(秋に1年半ぶりのシングルをリリース予定?)。ただしこれは週間チャートでの話です。年間となると初動売上でのポイント減算がかなり響くと思われます。今年上半期にリリースされた楽曲については以前のルールのまま今年の年間ランキングに反映される見込みですが(明日発表の上半期ランキングも同様)、今後CD売上が突出している楽曲については年間(上半期)ランキングでかなり厳しい結果が出るものと見込まれます。
今回の変更で週間チャートの結果にある程度の変化が見込まれますが、あくまで「週間チャートは1週間だけの結果」です。たった1週間でヒット曲が分かるものでしょうか? どうしても週間チャートの1位を気にしてしまうものですが、本当のヒット曲は何週間経っても色あせず上位に留まり続ける曲です。それに対し「代り映えの無いランキング」と言うのはヒットチャートの概念に反しています。1位を取った翌週にはあっさり10位にも残っていない曲は記憶に残る曲でしょうか? 逆に1位は取っていないが何週間も10位以内に残っている曲の方が記憶に残っているのではないでしょうか? そしてその流行っているはずの曲が10位以内に残れないランキングはヒットチャートと言えるでしょうか? 「たった1週間の、短絡的な頑張り」だけにスポットを当てていては、本当に流行っているものを見抜けません。週間チャートと言うものは、そのように見るべきではないでしょうか。
そしてこれは改めて示しますが、ヒットチャートのために音楽配信解禁を要望するのは本末転倒です。楽曲はチャートのためにあるものではありません。それらはファンのためであり歌手のためでなければなりません。ただジャニーズ系は音楽配信を解禁したところで大した結果が出るようには思えないのですが…(次回↓につづく)