2017年4月にTBSの音楽番組「CDTV」のチャートが大幅に改定され、オリコンをベースとするランキングからBillboard JAPANをベースとするランキングへと変更された。これによりCD売上のみではチャート上位に食い込めないケースが続発し戸惑いの声も挙がっているが、一方で配信のみの楽曲やアルバム収録曲、更には洋楽のランクインも可能となり、CD売上以外の要素も重要視され好意的に受け止められている視聴者も多い。最近ではオリコンと共に、またはオリコンの発表を止めてこのBillboard JAPANのチャートを取り上げる場面も増えてきているが、その中身とは何なのか。独自の解説も加え、ここで解説していきたいと思います。
・ Billboard JAPANとは?
日本でもオリコンが毎週「オリ☆スタ」を金曜日に発売していた(2016年3月25日発売の4月4日号を持って休刊となった)が、それと同じようにアメリカの音楽週刊誌として発売されているのがBillboardです(ただし現在は上記「オリ☆スタ」のような一般書店で取り扱っている冊子ではなくなっている)。その誌面で発表されているのがBillboardチャートであり、Billboard JAPANはその日本版となります(日本では今現在、Billboard JAPANの名が付く冊子は登場していない)。
BillboardはCD売上のみならず、ラジオでのオンエア回数等をランキング要素として取り入れた音楽チャートとなっており、2008年にスタートしたBillboard JAPANも日本の音楽事情を配慮し、アメリカとは異なるランキング要素を取り入れ音楽チャートを発表しています。
なお、オリコンがCDのランキングなのに対し、Billboardのシングル総合チャート、Hot 100は1曲単位でのランキングとなるため、シングルのカップリング曲やアルバムにのみ収録されている曲、また配信限定でリリースされている楽曲もランクインが可能です。
週間チャートの集計期間はオリコン同様、月曜日から日曜日までとなります。一般的にビルボードチャートと呼ばれているのは、毎週水曜日に発表されるシングル総合チャート「Hot 100」となり、これが現在CDTVのベースとなるチャートとなっています(月曜日に発表されているのはCD売上のみのチャートとなり、正確にはサウンドスキャンのCD売上チャートとなる。めざましテレビが木曜日に発表しているビルボードチャートは、総合チャートでは無い場合もあるので注意が必要)。この「Hot 100」は、以下の7つの要素により構成されています。
・ Billboard JAPANのチャート要素(チャート解析サービスCHART insightでのカラーリングに準じて色付け)、変更があり次第追記。
Radio
Billboardチャートにおける根幹とも言うべき存在がラジオでの放送を元に集計したラジオチャートとなります。プランテック調べの全国FM23局、及びAM9局での単純なオンエア回数では無く、(ワンコーラス、もしくは60秒以上でBGMでは無い)オンエア1回につき、そのラジオ局の聴取可能人数、ならびにその番組の平均聴取率を考慮してポイント化しランキングを作成しています(公式の説明では「ラジオ放送回数」とだけ書かれていますが、同一順位が下位でも発生していないケースが多いため、上記白抜き部分が適用されているものと見られます)。
多くのラジオ局でパワープレイ(ヘビーローテーション)を得た曲が上位の中心となり、リスナーからのリクエストもオンエアされれば反映されますが、オンエアされない限りは無効となるためリクエストの総数とも限りません。また全体的には洋楽系が強さを発揮するチャートでもありますが、チャート要素が増え、これだけの要素では総合上位に入れなくなってきているのが現状です。なお、単体のRadioチャート発表が2017年9月27日発表分(10月2日付)をもって終了しました(CHART insightでは引き続き各要素20位以内にランクインした曲の順位は確認可能)。
CD Sales(集計対象となっている一部店舗が公開されました)
Billboard JAPANにおけるCD売上チャートは、オリコンではなくSoundScan Japan調べのものをパッケージ合算して順位付けられています(従ってオリコンとはまったくの無関係。なおパッケージ別のサウンドスキャンCD売上週間ベスト20を掲載していたPhile-webの更新が2015年11月9日付をもって終了しましたが、SoundScan Japanそのものが無くなった訳では無い)。以前は一般的な店舗で販売されているパッケージのみを集計し、イベント会場などの売上を極力排除していたが、2016年2月から(正式なアナウンスがSoundScan Japan、Billboard JAPANから伝わっていないものの)、以前は計上していなかったキャラアニ.comやforTUNEmusic、イベント会場での販売売上が加味されており、それ以前のものから傾向が大幅に変わっています(依然としてファンクラブ限定盤やライブ会場限定盤など、一部の特殊販路盤が計上されていないものもある)。Billboard JAPANのHPで原則木曜日に月~水までの中間速報、オリコンより早い月曜夜には週間チャートが速報されます(いずれも5位まで、大型連休・祝日により1日遅れる場合もある)。なお、オリコンの“精査”のような減算対策は行っていません。現在の調査対象店舗は約53,00035,000店舗と、当初の約3,900店舗から大幅拡充されています。
シングル総合チャートであるHot 100においてはシングルCDの表題曲のみがポイント対象となり、カップリング曲やアルバムのみに収録されている楽曲はアルバムの売上は反映されません。アルバムの売上はアルバム総合チャート、Hot Albumsに反映されます。Hot 100では2016年度までは売上枚数の10%、2017年度は8.5%が総合チャートのポイントとして換算されますが、2017年度以降、週間で一定の売上を上回った場合はシングル総合チャートへのポイント換算が割合減算(係数処理)される措置が取られています(アルバム総合チャート「Hot Albums」ではこの措置はとられていない、またポイント未発表のためポイント換算は不明)。
(シングルCDセールス年間チャート)Top Singles Sales Year End 2017
(アルバムCDセールス年間チャート)Top Albums Sales Year End 2017
Download
2011年度から取り入れられたのが配信売上に当たるダウンロードの要素。当初はニールセン提供によるiTunesでの販売数に、その他の配信業者のDL数を類推し再計算したものが用いられていましたが、2016年2月1日からGfK Japan提供のiTunes、amazon、Google Play Music、mora、mu-mo、LINE MUSIC、レコチョクの販売実績に加え、これらの集計業者では集計対象外となっているレーベルの楽曲に関しては、iTunesの販売実績(ニールセン提供)を加えた形で構成されています。
追記:新たにLINE MUSICが追加されました
2017年10月4日発表分(10月9日付)からシングル、アルバムのダウンロードチャートが発表されました。なおアルバムチャートは全曲一括ダウンロードの回数に限定され、アルバム収録曲の単曲ダウンロードは反映されません(シングルチャートに反映、オリコンと同じ集計ルール)。
(シングル配信年間チャート)Top Download Songs Year End 2017
(アルバム配信年間チャート)Top Download Albums Year End 2017
なおHot 100へのポイント換算はDL数の10%と推定されます(Hot Albumsはポイント未発表のため不明)。
オリコンでもダウンロード販売のチャートが発表されていますが、オリコンの場合はチャート対象となるためにオリコンに対しレーベル単位での許諾申請が必要であり、アルバムチャートでは全曲一括ダウンロードの回数に限定されています。また集計元も異なります(オリコンはiTunes、オリコンミュージックストア、mora、mu-mo、LINE MUSIC、レコチョクの6社)。
Look up
2014年度から用いられるようになったのが、CDDBへのアクセス数となるルックアップの要素。音楽CDをオンライン環境上の音楽機器(パソコンを含む)に入れた際に、自動的にCDのタイトルや楽曲データをダウンロードする機能がそれに当たり(使用する機器、およびソフトにより、FreeDBやallmusicなど違うデータベースにアクセスするものもある)、推定のCD稼働数を示しています。
CD売上チャートで問題視されている複数種、複数購入により増大した売上からの購買者実数の洗い出し、さらにレンタルCDなど買わずにCDを手に入れ、楽曲を入手した人数の反映と言った要素があり、また付録として単体では一般販売されていないCDやDVDシングル、輸入盤の稼働数も反映されます。
傾向としては、やはり特典で売っているCDは100位以内にも入らないケースが多々見受けられます。そこまで低い順位では無くても、CD売上とルックアップの順位が大きく異なる場合は特典商法による売上の可能性が高いと判断できます。またCD発売から遅れてレンタル開始されるシングル(アルバムはほぼ全て)は、レンタル開始と共に順位を上げる傾向が見られます。
シングル総合チャートであるHot100はCD売上同様シングルCDの表題曲のみがポイント対象となりますが、アルバム総合チャートHot Albumsでは、アルバムのLook up数も集計の対象となります。
「フラゲ日のルックアップは無効」との話が出てきていますが、月曜日発売、日曜日にフラゲしたCDのルックアップデータが存在する事例が発生したため、この話は否定できそうです。
これも2014年シーズンから用いられるようになった要素。Twitterにおいて1つのツイートにアーティスト名と楽曲名が含まれているツイート(ハッシュタグを付ける必要は無い)を集計し、ポイント化したのがツイートの要素となる。現在のところBOT(自動投稿)も有効となっており、#NowPlayingもしくは#npで呟かれている回数が主に反映されていると見られます(このタグが必須ではない)。なお曲名以外(曲名では無いシングル・アルバムのタイトル)は無効となります。
総合チャートにツイート回数の約2.3%がポイントとなり加算されます(CD売上に上乗せする訳では無い)。
推測値
「HINOMARU」RADWINPS 3,373Pt. → ツイート 約38% → ツイートのポイント1,281Pt. → この週のツイート数 5.5万Tw → ツイートのポイント/ツイート数 0.0232… → 近似値で2.3%
Music Video
2015年シーズン後期から新たに用いられるようになった要素。国内におけるMVの再生回数が用いられる。ただしこれは「国際標準レコーディングコード」であるISRC(International Standard Recording Code)の登録を受け、それを附番したものに限るため、この手順を踏んでいない動画は公式の動画であってもランキングの対象にはなりません。当初はYouTubeのみでしたが、2016年1月からはGYAO!での再生回数も含まれています。
ツイート回数同様こちらも再生回数がCD売上分のポイント換算となり、現在は275PV=1枚として総合チャートにのみ換算されているようです。これは本家アメリカのThe Billboardがストリーミング再生回数のポイントを有料・無料で比重を変更したところによるものと見られます(以前は150PV=1枚)。
Streaming
こちらも2015年シーズン後期から新たに用いられるようになった要素。現在は大きく分けて2つの要素が取り入れられています。
まずストリーミング要素がチャートに導入された当初から要素となっているのが「プチリリ」の歌詞データアクセス回数。この機能を取り入れている主なラジオ型ストリーミングサービスを中心に集計されています(プチリリアプリは集計対象外)。
さらに2017年度からは、定額制音楽配信サービスの配信実績を導入。現在はGfK Japan提供によるAmazon Music Unlimited、Apple Music、AWA、Google Play Music、KKBOX、LINE MUSIC、Rakuten Music、レコチョクでの再生回数がストリーミング要素として導入され、また2017年10月4日発表分(10月9日付)からストリーミング単体のチャートが発表されました。
追記:新たにAmazon Music Unlimitedが追加されました
(ストリーミング年間チャート)Top Streaming Songs Year End 2017
シングル総合チャートであるHot 100では以上の7つの要素を合算しチャートが構成されており、アルバム総合チャートとなるHot AlbumsではCD Sales、Download、Look upの3要素で構成されています。またCDTVのチャート要素は上記CD Sales、Download、Streaming、Tweet、Music Videoに、以前からチャート要素となっているCANSYSTEMの有線リクエストデータを加えた6項目からなるチャートに変更されました。なおCDTVでのCD売上要素に関してはオリコンとサウンドスキャン両方の数字(平均値)が用いられているものと見られます。
CDTVのチャート要素(2018年度・修正版・現在一時閉鎖中)
(追記)
上記、8月29日にオリコンから正式な発表があったため、下記に詳細を記します。
当初はCD売上とダウンロード売上で合算ランキングを10月から発表予定でしたが、これにストリーミング要素を加える事が可能となり、2019年度(2018年12月24日付)からの発表開始に変更されました。新たに発表されるのは以下の3つ
・週間合算シングルランキング
・週間合算アルバムランキング
・週間ストリーミングランキング(いずれも100位まで発表予定)
集計対象(太字はBillboard JAPANと共通)